2013 Fiscal Year Research-status Report
新規受精調節タンパク質による卵保護膜制御機構の分子解析
Project/Area Number |
25440035
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
三輪 尚史 東邦大学, 医学部, 准教授 (40255427)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 受精 / 糖質 |
Research Abstract |
平成25年度において、ダイカルシンの卵周囲構造内糖鎖制御を介した受精阻害作用の分子機構を解析することを目的とし、下記の成果を得た。 1. ダイカルシンとgp41の相互作用の解明のために、ダイカルシン側に存在するgp41結合領域を解析した。まず、ダイカルシンの一部領域を欠失した変異蛋白質を作製し、変異蛋白質とgp41との結合能を解析したところ、ダイカルシンのN末端側に結合領域が存在することが推定された。結合領域をより狭く絞るために、推定結合領域内において複数の合成ペプチドを作製し、gp41との結合能を解析したところ、2つのアミノ酸領域が最大結合能をもつことが分かった。2つの合成ペプチドがダイカルシンの受精阻害作用に必須領域であるとすると、これらペプチドも同様に受精阻害作用をあわらすと想像できたので、あらかじめ未受精卵と合成ペプチドを反応させた後媒精したところ、合成ペプチドは用量依存的に受精を阻害することが分かった。また、合成ペプチドは、ダイカルシンと同様に、卵保護膜内糖鎖分布パターンを変化させることがわかった。以上より、これらのアミノ酸領域がgp41結合領域であり、ダイカルシンのもつ受精阻害作用の責任領域であることが示唆された。 2. gp41側のダイカルシン相互作用領域を同定するために、gp41の一部領域を欠失した変異蛋白質を作製し、変異蛋白質とダイカルシンとの結合能を解析したところ、gp41のZP-Cドメイン内に結合領域が存在することを示唆する結果を得た。 3.哺乳類におけるダイカルシンの受精調節作用を検討するため、過剰量のマウスダイカルシンホモローグをあらかじめ未受精卵と反応させた後媒精させ前核形成率により受精率を評価したところ、マウスダイカルシンホモローグが用量依存的に受精を阻害することがわかった。この結果は、ダイカルシンの作用の種を越えた普遍性を示唆する上で重要な知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の平成25年度計画は、1.ダイカルシンとgp41の相互作用領域の同定、2.ダイカルシンとgp41の相互作用領域の受精に及ぼす影響、3.マウスダイカルシンホモローグの受精および多精子拒否に及ぼす作用の解析である。1.と2.について、ダイカルシン側の相互作用領域の同定およびその領域の受精阻害作用、卵保護膜糖鎖分布制御作用に関する解析はおおむね完了した。また、gp41側のダイカルシン相互作用領域の同定についても予備的研究結果を得ている。3.については、マウスダイカルシンの受精阻害作用解析はほぼ完了した。以上より、今年度の研究の進展はおおむね順調と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度におけるダイカルシン側の相互作用領域の解析過程において、ダイカルシンおよび合成ペプチドによる「卵保護膜フィラメント構造」への影響の解析が、本研究成果をより堅実なものにすると考えられた。そこで、当初の研究計画には予定されていなかったものの、ダイカルシンおよび合成ペプチド反応後の卵保護膜フィラメント構造の電子顕微鏡による超微細形態解析を実施する。すでに、走査電子顕微鏡観察により、フィラメントの立体配置が変化する予備的結果を得ており、実験遂行に問題はない。上記実験に加え、当初予定されていた実験も遂行することにより、ダイカルシンの卵周囲構造への影響の包括的解明をねらう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一部実験において実験遂行上不可欠な試薬の年度内入手が困難なものがあったため、次年度の実験とした。そのため、試薬経費を次年度に繰り越すことになった。 前年度から繰り越した経費に加え、当初予定していた研究計画に基づく研究費用を使用予定である。内訳は、試薬などの物品購入(115万円)、実験動物購入費(10万円)、学会参加の旅費(10万円)の予定である。
|
Research Products
(4 results)