2014 Fiscal Year Research-status Report
タウタンパク質の神経原線維変化の形成抑制を目指したプロリン異性化酵素改変体の創製
Project/Area Number |
25440064
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
伊倉 貞吉 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50251393)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | タウタンパク質 / Pin1 / プロリン異性化 / 凝集化 / アルツハイマー病 / 脱リン酸化 / PP2A / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度末までに作成したPin1の変異体を用いて、タウタンパク質の凝集抑制活性とPin1の異性化活性との相関を解析した。この目的のため、タウタンパク質のNFTの核形成に重要な微小管結合部位とリン酸化部位の両者を含むペプチドを合成した。タウペプチドの凝集化は、凝集に伴う蛍光強度変化をプローブとして用いて検出した。また、Pin1の異性化活性は昨年度に開発したELISAを用いた新規測定法により測定した。その結果、Pin1の異性化活性と凝集抑制活性とには明確な相関は認められなかった。さらに、NMRによるタウペプチドのリン酸化部位の異性化状態の直接的観測から、タウペプチドの凝集化には異性化状態は直接的には影響しないことが推察された。一方で、Pin1の凝集抑制活性はタウペプチドに対する親和性と相関する可能性が示唆された。 また、上述の研究に加えて、リン酸化がタウペプチドの凝集特性に及ぼす影響も解析した。この結果、トランス型特異的脱リン酸化酵素のPP2AとPin1との協同的な反応により、確かに、タウペプチドの凝集化抑制が向上することが明らかになった。 これまでの研究成果は、本年度の国内・国外の学会で報告した。現在、論文としてまとめている段階である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、本年度はPin1のプロリン異性化活性を向上させる変異体を設計するとともに、大腸菌の系で発現及び精製し、タウペプチドの凝集抑制活性能の向上を図る予定であった。ところが、Pin1のプロリン異性化活性の向上をもたらす変異体は、数種類作成することに成功したものの、プロリン異性化活性とタウペプチドの凝集化の抑制能力との相関が認められなかった。このことは、プロリン異性化状態がタウタンパク質(タウペプチド)の凝集化の原因のひとつであるという定説に対し、本研究は一石を投じることになった。一方で、タウタンパク質の凝集化の抑制能をPin1が確実に有することも確認したので、今後の研究の中で凝集化抑制機構の本質的な解明を目指していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はPin1にプロテアーゼ活性を付与するような変異を導入する予定であり、現在までの予備的な研究により、変異にともなうプロテアーゼ活性の出現を確認している。さらに活性と特異性を高めることにより、実際にタウタンパク質のリン酸化部位の特異的な切断による凝集化阻害を目指す予定である。また、これと平行して、Pin1の本来のタウタンパク質凝集化抑制機構についても、解析を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度途中より広島大学のグループと、Pin1の異性化活性測定に関する共同研究を開始した。当初予定になかった広島大学での研究打合せのための旅費として、前倒し支払請求をおこなった。当初は2回の出張を計画していたが、先方との事前の打合せを密にしたり、インターネットの効率的な活用により、1回の日帰り出張で十分な打合せが行えた。その結果、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度生じた次年度使用額は、当初、次年度の研究で使用する予定であった研究費から捻出した前倒し支払請求額の一部である。上記の理由により、幸いにも前倒し支払請求額の6割程度を次年度に戻すことができたので、ほぼ当初の研究計画に従って研究を遂行する予定である。
|