2014 Fiscal Year Research-status Report
酸化的リン酸化-活性酸素の同時可視化及びミトコンドリアの自己組織化機構の解明
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25440068
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
柄谷 肇 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (10169659)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生物発光 / 蛍光発光 / 酸化的リン酸化 / 活性酸素種 / ミトコンドリア / 大腸菌 / 発光細菌 / ホタル |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度研究計画において、酸化的リン酸化阻害(呼吸阻害)により生物発光あるいは蛍光発光が増大する大腸菌発現系を構築した。前年度に引き続き大腸菌は真核細胞ミトコンドリア(MT)モデルとして使用した。生物発光系では、Photobacterium 属の発光細菌発光関連タンパク質コード遺伝子(bmFPluxオペロン)の上流に過酸化水素感受性プロモーター(カタラーゼコード遺伝子プロモーター、kat')を結合した(kat'-bmFPlux)。他方、蛍光発光系の場合、発光細菌(Aliivibrio sifiae Y1)青色蛍光タンパク質(Y1-Blue)コード遺伝子の上流にkat'遺伝子を結合した(kat'-Y1-Blue)。これらの遺伝子はプラスミドベクターにクローニングした後、大腸菌の形質転換に供した(E.coli-kat'-bmFPluxおよびE.coli-kat'-Y1-Blue)。kat'を融合した理由は、一般に呼吸阻害では活性酸素種(ROS)が一時的に多量に発生し、主要な最終生成物が過酸化水素であることによる。 過酸化水素を細胞外から供給して生物発光および蛍光発光挙動を測定した結果、μMレベルの添加により、kat'プロモーターが機能し、それぞれ遺伝子が発現することを確認した。一連の実験から酸化的リン酸化阻害時に生じるROSを、これまでに構築したY1-Yellow系だけでなく生物発光およびY1-Blue蛍光により可視化できることを示した。今回構築した系は、ROSが生じた時にのみ遺伝子が機能するよう工夫したものであり、ROSとの直接的相互作用による光強度の変化と組み合わせると、酸化的リン酸化の可視化および考察の幅が広がるものと期待できる。 他方、MT自己組織化と関連して生物発光大腸菌カルチャーやコロニーの発光解析から、細胞集団で見られる特徴を可視化できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過酸化水素応答性の生物発光タンパク質コード遺伝子(kat'-bmFPlux)および蛍光発光コード遺伝子(kat'-Y1-Blue)を構築したことによる。さらにこれらの遺伝子発現系が、酸化的リン酸化阻害により大量発生するROSの主要な最終生成物として予想される過酸化水素に応答して発現/可視化することを確認した。これらは、酸化的リン酸化の可視化研究において要素技術と見なし得る。得られた成果は重要であり、最終年度において改善を加えながら、MTにおける酸化的リン酸化の可視化に活かす。 bmFPluxオペロンについて、これまで自己発光系を実現する遺伝子系として構築してきた。上述の通り、今回さらに過酸化水素に応答する系を構築した。しかしながら、2014年度の課題としたホタルルシフェラーゼコード遺伝子(luc遺伝子)とbmFPluxオペロンとの融合実験では、まだ発現にいたっていない。要因として、プラスミドベクターに比べてbmFPluxオペロンサイズが大きいことが考えられた。またMT生物発光の実現に至らなかった。しかしながら、実験から多くの有益な知見を得ており最終年度に生かせるものと期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化的リン酸化の可視化の実現を目指して、発光細菌ルシフェラーゼ及びホタルルシフェラーゼを共にコードする共発現融合遺伝子の構築を行う。これまでに得られた知見に基づいて、bmFPluxオペロンに含まれる発光に関わる最小遺伝子部分(luxAB)に焦点を置き、luc遺伝子との融合遺伝子(bmFPluxAB-luc遺伝子)を構築する。融合遺伝子をプラスミドベクターに挿入した後、大腸菌発現系を構築する。構築した発光細菌およびホタルの生物発光を共に示す大腸菌系において、酸化的リン酸化の可視化を行う。bmFPluxAB-luc遺伝子にはさらにkat'プロモーター遺伝子を結合し(kat'-luxAB-luc遺伝子)、ROS応答性を付与する。これによって機能強化を図る。具体には、酸化的リン酸化の可視化の要目となる、NADHとATPの量的変動を発光シグナルから調べるものである。さらに酸化的リン酸化阻害により生じるROSの可視化を行う。ROS の可視化の検証実験としてkat'-Y1-BlueによるROSの蛍光可視化を行う。 これまでに得た知見に基づいてMTセンシングアミノ酸配列をコードする遺伝子をbmFPluxAB-luc遺伝子およびkat'-bmFPluxAB-luc遺伝子に融合した系の構築をおこなう(MT-bmFPluxAB-luc遺伝子およびkat'-MT-bmFPluxAB-luc遺伝子)。これらの遺伝子は哺乳類細胞用プラスミドベクターにクローニングする。 MT-bmFPluxAB-luc遺伝子およびkat'-MT-bmFPluxAB-luc遺伝子の哺乳類細胞発現系を構築し、酸化的リン酸化を生物発光シグナルとして観測する手法を検討する。観測において、ROSを局所的且つ一時的に大量発生させる多様なストレスを細胞に与えた系を調べ、MTにおける多様な動的変化を光をシグナルとして可視化する。正常状態で観測される結果と比較しながら、酸化的リン酸化とROSの量的変動との関係、MTのストレス応答性自己組織化挙動などについて考察する。
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Causes of Carryover |
発光細菌発光関連タンパク質コード遺伝子(lux遺伝子)およびホタル生物発光関連タンパク質コード遺伝子(luc遺伝子)との融合遺伝子系の構築に時間を取り、2014年度期間内に達成できなかった。この実験と関連して、遺伝子合成のための資金を十分に消化できなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記発現系と関連して、関連遺伝子の一部を合成遺伝子として外注することを計画している。
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Research Products
(7 results)