2013 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロクロマチン再考:リボソームDNAにおける転写と組換えを指標とした解析
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25440090
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
常岡 誠 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (50197745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬田 敏幸 産業医科大学, 産業医学研究支援機構, 准教授 (30213482)
岡本 健吾 高崎健康福祉大学, 薬学部, 講師 (60437754)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヘテロクロマチン / リボソームRNA遺伝子 / ヒストン / H4K20me3 |
Research Abstract |
ヒストンH4トリメチルLys20(H4K20me3)はヘテロクロマチンと強く関係している。転写抑制のマークとして良く研究されているH3K9me3が転写能をもつrDNA promoter上にも検出されるのに対してH4K20me3マークをもつrDNA遺伝子は常に転写抑制されており、H4K20me3が真のヘテロクロマチンマークであることが示唆されている。我々はヒストン脱メチル化酵素KDM2Aの研究を行ってきた。その過程でKDM2A遺伝子からKDM2Aとは別の転写開始点から転写されるmRNAの翻訳産物としてshort form KDM2A(SF-KDM2A)を同定したが、SF-KDM2Aの生物学的機能はまだ明らかになっていない。今回SF-KDM2Aを強制発現するとrDNA転写を上昇することを発見した。この際のrDNA promoterのクロマチン構造を調べたところ、H4K20me3量の減少が認められた。そこで、SF-KDM2AのrDNA上での作用発揮機構解明へと検討を進めた結果、 1、SF-KDM2AはrDNA遺伝子領域全体にわたって結合していた。 2、SF-KDM2AにはPHD fingerというドメインが存在するが、PHD fingerに変異を導入したSF-KDM2AはrDNA promoterに結合しなかった。 3、PHD finger構造をもつ蛋白質はメチル化状態を認識してヒストンテールと結合することが報告されているが、SF-KDM2A PHD fingerはin vitroでヒストンと結合した。 以上の結果は、SF-KDM2AがPHD fingerを介してヒストンと結合し、その後何らかの機構によりH4K20me3を減らしrDNAクロマチンの構造を調節している可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的として 真にヘテロクロマチン化と関連するヒストンマークの特定をあげた。昨年度の研究で、これまで最も転写抑制と強く結びついているヒストンマークであるH4K20me3が我々の実験系でもrDNAクロマチン上に確認され、さらに我々が同定したSF-KDM2Aがこのマークを減少させることを観察した。SF-KDM2AにはCxxC-ZFドメインが存在しているが、このドメインを介してSF-KDM2Aは非メチルCpG 配列を認識し、rDNAへ結合する。非メチルCpG 配列は遺伝子転写活性化と関連していることから、非メチルCpG 配列に結合したSF-KDM2Aが何らかの方法でヘテロクロマチンマークであるH4K20me3を減少させ、遺伝子を転写活性化状態へと向かわせる可能性が考えられる。クロマチン構造調節解明にはクロマチン上の化学修飾マークを読み取る蛋白質の同定が必要であるが、SF-KDM2AはDNAメチル化状態だけでなく、PHD fingerによりヒストンマークも読み取る可能性が示唆された。したがって昨年度の研究結果はヘテロクロマチン形成・維持の分子機構解明への手掛かりを与えるものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
1、PHD fingerが結合するヒストンを特定する。 2、PHD finger中にリン酸化されるアミノ酸がある。このリン酸化はPHD fingerの機能を調節している可能性がある。そこで、この領域のリン酸化ペプチド特異的抗体を作製し、リン酸化修飾の存在を細胞中で確認し、rDNAクロマチン状態との関連性を検討する。 3、SF-KDM2Aの中にはCxxC-ZF PHD fingerに加え、F-boxといわれるドメインも存在する。このドメインについてもH4K20me3量調節への関連性を検討する。 4、rDNAのクロマチン状態を決定する中心的な因子としてTTF-I-interacting protein #5 (TIP5), Cockayne syndrome B (CSB) が報告されている。そこでこれらの蛋白質のrDNAへの結合に対するSF-KDM2Aの影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、PHD finger内のアミノ酸リン酸化の生理的意義を明らかにするため、ペプチド特異的抗体作製をする。すでにペプチド特異的抗体をシグマ社に発注した。現在免疫中であり、抗体作製完成後に支払いを行わなければならないため、次年度使用額が生じた。2、メチル化修飾された様々なヒストンテールペプチドを購入する。昨年度、ヒストン蛋白質とKDM2A PHD fingerとの結合が確認できた。さらに一部の化学修飾ペプチドについて実験条件の検討を始め、ポジティブな結果が出つつある。PHD fingerが結合するヒストンの種類を特定のため、多種類の修飾ヒストンテールペプチドを購入する必要が生じた。 1、PHD finger内の領域のリン酸化ペプチド特異的抗体を作製する。 2、修飾ヒストンテールペプチドを購入する。 3、rDNAクロマチン状態と強く関連する蛋白質等に対する特異抗体を新たに購入する。
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[Journal Article] Mori T, Okamoto K, Tanaka Y, Teye K, Umata T, Ohneda K, Tokuyama K, Okabe M, Tsuneoka M.2013
Author(s)
Mori T, Okamoto K, Tanaka Y, Teye K, Umata T, Ohneda K, Tokuyama K, Okabe M, Tsuneoka M.
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Journal Title
Cell Struct Funct.
Volume: 38
Pages: 155-67
DOI
Peer Reviewed
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