2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25440097
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水野 武 国立研究開発法人理化学研究所, 今本細胞核機能研究室, 専任研究員 (30281629)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 核内タンパク質品質管理 / 核内タンパク質分解 / 温度感受性変異体 / DNAポリメラーゼα / HSP90 / ノボビオシン / tsFT20 / 核内変性タンパク質分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
核内で点変異を有するポリメラーゼαが制限温度下でどのように分解されるかを詳細に解析した。核内品質管理機構は不溶性画分への移行と分子シャペロンとの関係が,未解明で重要な論点になっていることから,自前の研究材料と構造変化と分子シャペロンにのみ標的を絞り,堅実な実験データの集積に専心した。昨年の成果を踏まえて,光刺激型GFPであるkikumeとの融合タンパク質を利用した生細胞観察の実験とsiRNAによるCHIPのノックダウンによる実験とを合わせて,仮説を検証した。NIH3T3細胞にp180tsFT20を一過性過剰発現させシフトアップする前に1.5 mM novobiocin もしくはMG132を添加し33度1時間添加し,その後、39.5度3時間処理し細胞を回収した。可溶性分画と不溶性画分に分け,ウエスタンブロット法により解析した。Noboviocin存在下では不溶性画分にp180tsFT20は検出され,しかもポリユビキチン化はされていなかった。一方プロテアソーム阻害剤MG132では不溶性画分に集積したp180はポリユビキチン化されており,ユビキチン化する前のステップにHSP90の活性が必要であることが分かった。 さらに,novobiocin存在下で可溶性画分に残っているp180の構造変化を検出する為に可溶性画分をグリセロール密度勾配遠心により分画した。p180tsFT20は制限温度下で構造変化を生じて沈降計数が7.1Sから12S以上のボトムに沈降することが分かった。
以上の実験により点変異を有するp180は制限温度下で構造変化が生じて,溶解度の低下を来たし,HSP90の分子シャペロンにより溶解度が低下したp180が認識され,ポリユビキチン化することが分かった。ここまでで,核の中の不溶性に変性するタンパク質のポリユビキチン化と分解にはHSP90が関与していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
核の中と細胞質で起こる現象の区別を明確にするために、光刺激による観察実験を試みており、しかし、原因不明であるが、光刺激型変異体の発現効率が悪く、EGFPとの融合タンパク質の10分の1以下の効率であり、観察が困難である。 安定発現細胞株を作成することで解決できる可能性があり、延長後に完成の目処が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により哺乳類細胞の細胞核内のタンパク質品質管理機構に働く因子の候補が絞り込まれた。モデル基質としてのDNAポリメラーゼαの温度感受性変異体以外にどのような核タンパク質を基質にするかを特定することで、どのようなストレス応答に対応しているのか、疾病、ガン化、老化、遺伝病との関係を調べていく。特に核に変性タンパク質として蓄積することが報告されているポリグルタミン病の原因因子の認識、分解、に関与するかを調べる。 細胞核内に変性タンパク質を蓄積する細胞外ストレスとして、金属ストレス、低酸素ストレスに着目し、細胞核内タンパク質の変性状況、ユビキチン化の状況、分解のレベルを解析する。核内分解系に働く律速段階を同定し、そのステップの増強を図ることで、品質管理機構の亢進を目指せると考えている。
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Causes of Carryover |
E3ユビキチンリガーゼとして同定したCHIP分子を認識する抗体が細胞染色で使えないことから、GFP融合タンパク質の安定発現細胞を構築し、実験結果の追試を行う。また、p180GFP融合タンパク質の安定発現細胞を構築し、核内のタンパク質分解を解析する、等の実験が予想外に難航しており、最新の遺伝子組換え技術を利用することで克服することができつつある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞培養用試薬、遺伝子組換え実験用分子生物学試薬等の消耗品と論文発表用の掲載料
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