2014 Fiscal Year Research-status Report
AmotとLatsの双方向制御によるHippo経路活性化機構の解明
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25440112
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
平手 良和 東京医科歯科大学, 実験動物センター, 講師 (70342839)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 発生・分化 / シグナル伝達 / 細胞間コミュニケーション / Hippo経路 / 細胞極性 |
Outline of Annual Research Achievements |
Hippoシグナルは栄養外胚葉分化に関与する転写活性化因子Yapの働きを抑制する。そのため、Hippoシグナルが弱い外側細胞ではYapが働いて栄養外胚葉へと分化するのに対し、Hippoシグナルの強い内側細胞では栄養外胚葉への分化が起こらず、多能性を維持した内部細胞塊が形成される。この内外でのHippoシグナルレベルの違いは外側細胞が持つ細胞極性がHippoシグナルを抑制することで形成される。これまでHippoシグナルと細胞極性による細胞分化の解析は胚盤胞を用いて行ってきたが、細胞分化は8細胞期から16細胞期へと進行する頃に始まる。従って、Hippo経路による細胞分化制御の全容を解明する上で8-16細胞期におけるHippo経路の制御機構を明らかにすることが重要であり、本年度は8-16細胞期に焦点を当てて解析を行った。 8-16細胞期のHippo経路も胚盤胞期と同様に細胞極性による抑制を受けるかを調べるために極性破壊を行った。16細胞期でも胚盤胞と同様に極性破壊によるHippo活性化が起こったが、Yapの機能阻害は胚盤胞期と比べ弱かった。また、胚盤胞期では極性破壊に伴い外側細胞頂端側にみられる微絨毛が消失したが、16細胞期では極性破壊をしても微絨毛は残った。微絨毛は主にF-アクチンからなる構造であるが、F-アクチンはHippoシグナル抑制に関与することが示唆されている。従って、極性破壊によるYap機能阻害の胚盤胞期と16細胞期における違いは微絨毛の有無の違いによるものであると示唆された。微絨毛にはHippo経路活性化に関わるAngiomotin(Amot)の局在も見られるがF-アクチンと結合したAmotはHippo経路を活性化できないと考えられる。昨年度の研究で明らかにされたようにHippo経路の中心的キナーゼであるLatsも微絨毛と同様に頂端側に局在しているが、微絨毛を構成するF-アクチンはAmotとLatsの相互作用に干渉することでAmotによるLatsの活性化を阻害しているのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、16細胞期における細胞極性によるHippo経路および細胞分化制御に焦点を当てて解析を行った。16細胞期はそれまで均質だった各割球が栄養外胚葉と内部細胞塊分化へと分化を始める段階であり、この段階でのHippo経路制御は胚盤胞期のように完全に細胞極性依存的ではなく、微絨毛のF-アクチンによる細胞極性非依存的な制御を受けていることを明らかにした。F-アクチンによるAmot-Lats相互作用への干渉は着床前胚の細胞分化制御に限らずHippo経路が関与する細胞増殖・細胞死の制御および細胞癌化の解明にもつながるものであり、ほ乳類胚を用いた個体レベルの解析としては最も扱いが容易である本実験系のメリットを生かして成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
16細胞期のHippo経路制御機構がこれまで研究対象としていた胚盤胞期と異なる制御を受けていることが明らかになったので、H27年度は引き続き16細胞期を中心とした解析を行う。16細胞期において細胞極性を制御するPar-aPKCシステムの各構成因子の機能阻害を行い、Hippo経路と細胞分化への影響を解析し、16細胞期における細胞極性依存的および非依存的制御についてより詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
H26年度は東京医科歯科大学実験動物センターに異動して1年目であったため、これまで未経験であったセンター業務の習熟にほとんどの時間を費やすこととなった。そのため、本研究に十分な時間を確保することができず次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の最終年度となるH27年度は業務と研究のバランスを取り、研究目的を達成できるように進めていく。H26年度研究費の残額は、本来なら昨年度に予定だった実験を行う際の物品費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)