2015 Fiscal Year Research-status Report
3次元細胞モデルを使って生体のキラリティーの由来を明らかにする
Project/Area Number |
25440117
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
本多 久夫 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10289118)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心臓ループ / チューブのねじれ / 細胞頂点モデル / 自己構築 / 側板中胚葉 / 細胞のキラリティー / vertex dynamics |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の形はおもに遺伝子がきめていると考えられている。遺伝子から形への道筋がわかり始めた。この道筋では細胞の自己構築を記述する「細胞モデル」が必須の役割を果たす。研究の目的は、細胞モデルをつかった研究方法を完備するためにいくつかの新たな手法をつくることと、これらを使っていまだに不思議と感じられる形態形成である「生体のキラリティーの由来」を明らかにすることである。/これまで細胞モデルとしては、2次元平面での多角形の集まりを記述するvertex dynamics (細胞頂点の運動学)および3次元空間での多面体の集まりを記述するvertex dynamicsをつくって使用してきた。2次元での数理モデルは、異なった細胞同士が同じ細胞同士よりも強く結合するという、nectin2およびnectin3が絡んだ細胞接着機構が存在するのだが、これの実証のために2次元細胞モデルをつかった研究を論文として公表した。/さらに、多角形の集まりでできた面が3次元空間で自由に変形する細胞シートモデルをつくった。この細胞シートモデルに細胞分裂を導入し、細胞分裂を行う細胞と行わない細胞を区別し、行う細胞には細胞分裂の方向を、各々の細胞がもつpolarityに従ってきまるようにした。これによりはじめには単純な円柱であったものが、膨らみながらねじれができるようになっていた。/今回は、このねじれを実際の心臓の発生と対応するようにできた。すなわち、細胞分裂を行う細胞と行わない細胞は、心臓チューブを形成する左および右の側板中胚葉の遺伝子発現の差異によるとした。また細胞分裂や配置の方向についてのキラリティーを導入した。これにより実際の心臓のねじれと同じものができた。こうして心臓モデルは実験により検証できるモデルになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
心臓発生初期に見られるループ形成は複雑で、機構の解明は難しい問題だと考えてきたが、これを物理学があつかう座屈現象(限られた空間内で棒が伸張するとき、たわまざるをえない)ととらえ、細胞分裂に局在があることとキラルな細胞配置を考えれば思いのほか単純に理解できた。しかもこれは遺伝子発現と対応可能であることが分かった。いまからすべきことは実験的事実との対応づけである。このために実験でどの様なことを調べればよいかは、モデルを使ったコンピュータ・シミュレーションの結果が示してくれる。生物の不思議な現象を、実験でなく理論が先導して解明するというまれな研究例になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
心臓モデルを使ったコンピュータ・シミュレーションの示唆にしたがって、心臓発生の過程を研究している実験的研究者と共同で、細胞分裂頻度の局所性および分裂後の細胞配置の様子をしらべる。
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Causes of Carryover |
パソコンソフトの購入を遅らせたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
パソコンソフトを購入する。
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