2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25440124
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横山 隆亮 東北大学, 生命科学研究科, 講師 (90302083)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イネ / 細胞壁 / キシログルカン / 細胞間輸送 / マイクロダイセクション / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では細胞壁多糖の細胞間輸送の制御機構の解明を目指している。これまでの研究を通して、イネの維管束組織において、フコシル化キシログルカンが伴細胞で合成された後に師管細胞へと輸送され、キシログルカン転移酵素/加水分解酵素(XTH)によって師管の細胞壁に組込まれることを解明していた。 1. イネの維管束組織においては、師管細胞以外にもXTHが存在する一方で、師管細胞壁だけにキシログルカンが組み込まれることから、キシログルカンが方向性をもって師管へと輸送されることが示唆された。維管束組織におけるキシログルカン分子の輸送経路を観察するため、免疫電子顕微鏡法を活用して維管束組織内のキシログルカン分子の局在部位を詳細に調べた。この結果、伴細胞で合成されるキシログルカンは師管細胞壁と特定の細胞間領域だけに存在することが観察され、キシログルカンが方向性を持って輸送されることを支持する結果を得ることができた。またこの結果、キシログルカンの輸送経路を限定することに成功した。 2. 1で明らかになった輸送経路の細胞間領域および周辺細胞に存在すると推測される輸送制御因子の単離を目指し、この数細胞の領域だけを回収できるマイクロダイセクションを利用したサンプリング方法を開発した。本技術を用いて回収した数細胞からRNA抽出やRNAシークエンスが可能であることが確認できた一方で、精度の高いプロテオーム解析をするためには十分な品質ではない可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「キシログルカンが方向性のない分泌・拡散の後に師管の細胞壁によって補足される機構があるのか、あるいは方向性をもって師管の細胞壁だけに輸送されるのかを明らかにする」という研究目標に関して、キシログルカンを細胞壁に組込むXTHの研究結果からのだけではなく、キシログルカン分子の局在部位を免疫電子顕微鏡法で詳細に解析することで、方向性をもった輸送制御機構であることを直接示すことに成功した。またこれまで以上にキシログルカンの輸送経路を限定することに成功するとともに、そのような限られた1~数細胞の領域をサンプリングする技術を開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、1~数細胞の微量サンプルからタンパク質の精製法を改良し、イネの維管束組織におけるキシログルカンの輸送に関わる制御因子の単離を試みる。平成26年度までに開発したマイクロダイセクションによるサンプリング方法では、精度の高いプロテオーム解析をするためには質と量ともに十分ではない可能性が示唆されたことから、本年度は、以下の点を改良して、プロテオーム解析を行い、制御因子の同定を試みる。 1)組織切片のパッケージング方法を改良し、マイクロダイセクションによって目的細胞を迅速かつ多量に回収する。 2)マイクロダイセクションによって回収された目的細胞のタンパク質の安定化の方法、さらには細胞からのタンパク質の抽出方法を改良する。 3)抽出したタンパク質の断片を高感度で検出する技術を用いる。 平成27年度は、上記の方法に加え、輸送経路周辺の細胞に特異的に発現している遺伝子を網羅的に同定し、多面的な方法で制御因子の同定を目指す。また師管細胞の細胞壁へ組み込む機能をもつキシログルカン転移酵素/加水分解酵素の基質特異性などから、輸送されるキシログルカン分子の構造を明らかにする。これによりキシログルカン分子の輸送に直接関わる候補因子なども推定できる。 以上の研究成果を国内外の学会、そして学術論文を通じて平成27年度中に発表する。
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Research Products
(11 results)