2014 Fiscal Year Research-status Report
非典型Aux/IAAタンパク質を介した種子成熟プログラムの解明
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25440131
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
加賀谷 安章 三重大学, 生命科学研究支援センター, 助教 (20335152)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 種子成熟 / 種子休眠 / アブシジン酸 / オーキシン / 転写因子 / 細胞分裂 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、非典型Aux/IAAタンパク質の種子成熟過程の作用のうち、特に種子休眠の獲得制御に焦点を当てて解析した。その結果、IAA30がFUS3の制御下で種子成熟過程での胚の茎頂分裂組織および根端分裂組織の停止応答を介して種子成熟過程後期での休眠獲得を制御すること、そして、完熟した種子の一次休眠獲得には関わらないことを明らかにした。これらの結果は、母体上での休眠獲得と、完熟種子での一次休眠の獲得はそれぞれ異なる生理現象であることを強く示唆する。さらに、IAA30の種子成熟過程での発現は、FUS3によるABAとオーキシンレベルの上昇制御により制御されていることを見出した。これまでに、オーキシンはABAによる種子休眠作用を増強させる作用があることが示唆されてきたが、そのメカニズムは不明のままであった。本研究結果より、オーキシンによるABAによる発芽阻害作用の増強は、IAA30の発現レベルの上昇に起因することが示唆された。 また、一次休眠の低下するiaa32-1変異体に突然変異を誘起させて著しい低休眠性に成り穂発芽を示す変異体16系統を分離して原因遺伝子を同定したところ、いずれもfus3変異体のアレルであることを明らかにした。したがって、シロイヌナズナでの穂発芽は、IAA32による一次休眠獲得とFUS3、IAA30による母体上での種子休眠獲得の2つの作用の機能不全により生じると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題の研究目標として、以下の点を明らかにすることを掲げた。 i, 非典型Aux/IAAの発現制御メカニズムを明らかにする。ii, 非典型Aux/IAAによるオーキシンシグナル伝達抑制がABA情報制御とどのように関わるかを明らかにする。iii, 非典型Aux/IAAおよびその共役因子と既知の種子成熟マスター制御因群との間での種子成熟作用メカニズムを明らかにする。 iに関しては、母体上での休眠獲得に関わるIAA30の種子成熟過程での発現は、FUS3によるABAとオーキシンレベルの上昇制御により制御されていることを見出した。さらに、一次休眠獲得に関わるIAA32の発現がABI3を介してABAにより制御されること、ならびにジベレリンにより負に制御されることを見出している。そして、iiに関しては、IAA30およびIAA32ともにABAシグナル伝達経路に組み込まれ休眠獲得に関わることを見出している。iiiに関しては、共役因子を遺伝学的手法で同定を試みたが、現時点では達成されていない。しかしながら、種子成熟マスター制御因子のFUS3とABI3と非典型Aux/IAA間での作用関係についての理解は大きく進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
① IAA30のFUS3によるABAとオーキシンレベルの上昇制御による発現制御メカニズムに関して解析を進める。 ② IAA32のジベレリンによる抑制メカニズムを解析して、休眠獲得と覚醒の分子カスケードを解析する。 ③ 当初計画の非典型Aux/IAAの共役因子の同定を目的としたiaa32-1エンハンサー突然変異体の分離を起点としたアプローチは、これまで得られた変異体がすべてfus3のアレルであることが判明した。したがって、目的としている遺伝子の変異体は表現型が弱く分離できないと考えられ、本申請課題の研究期間中に成し遂げることは困難と予想される。そこで、IAA30およびIAA32の共役因子と予想されるARF転写因子の変異体を入手し、その表現型解析とカスケード分析により非典型Aux/IAAおよびその共役因子と既知の種子成熟マスター制御因群との間での種子成熟作用メカニズムを明らかにする。
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[Journal Article] Rice SNF2 family helicase ENL1 is essential for syncytial endosperm development.2015
Author(s)
Hara, T., Katoh, H., Ogawa, D., Kagaya, Y., Sato, Y., Kitano, H., Nagato, Y., Ishikawa, R., Ono, A., Kinoshita, T., Takeda, S. and Hattori, T.
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Journal Title
The Plant Journal
Volume: 81
Pages: 1-12
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Cell-by-cell developmental transition from embryo to postgermination phase revealed by heterochronic gene expression and ER-body formation in Arabidopsis leafy cotyledon mutants.2014
Author(s)
Yamamoto, A., Yoshii, M., Murase, S., Fujita, M., Kurata, N., Hobo, T., Kagaya, Y., Takeda, S. and Hattori, T.
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Journal Title
Plant & Cell Physiology
Volume: 55
Pages: 2112-2125
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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