2013 Fiscal Year Research-status Report
シロイヌナズナの組織培養における側根原基から茎頂メリステムへの転換機構
Project/Area Number |
25440143
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
坂野 弘美 中部大学, 応用生物学部, 教授 (80340206)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 研三 中部大学, 応用生物学部, 教授 (80164292)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | シュート再生 / ESR1 / 転写制御因子 |
Research Abstract |
本研究では、シロイヌナズナ転写制御因子ESR1の機能解析を通して、組織培養において側根原基から茎頂メリステムに転換する分子機構を解明することを目標としている。 1. ESR1プロモータ-ルシフェラーゼ(LUC)融合遺伝子を持つシロイヌナズナの培養組織にアクティベーションタギングベクターを導入し、アクティベーションタギングによりゲノム中の遺伝子をランダムに強制発現させたときに、LUC活性が上昇する組織を探索することにより、ESR1の発現を制御する遺伝子の同定を試みている。25年度は、この手法により約1万の形質転換組織のスクリーニングを行った。これまでに陽性を示す組織は得られていないが、26年度前半までにアクティベーションタギングの飽和レベルである10万個体までスクリーニングを行う計画で実験を継続している。 2. ESR1のC末端領域に存在するESRモチーフは、転写活性化能を担うとともに、その他の未知の機能を持つことが明らかになっている。我々は、この領域に他のタンパク質が結合し、ESR1の活性を制御しているという仮説を立て、この領域に結合するタンパク質の探索を行った。ESRモチーフは酵母細胞内においても転写活性化能を持つために、結合タンパク質の探索に従来のTwo-hybrid法を用いることができない。そこで、Split-Trp法を用いてESRモチーフに結合するタンパク質の探索を行った。その結果、4種類のタンパク質を同定したが、すべて機能が未知のタンパク質であった。ESR1は転写制御因子であることから、その結合タンパク質も核に存在すると考えられるが、これらのうちの1つESR1-Interacting Candidate 1 (EIC1)はGFPとの融合タンパク質が核に局在することを明らかにした。現在、大腸菌で発現させたESR1とEIC1が試験管内でも結合するかどうかを検証している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ESR1の発現を制御する遺伝子の探索については、25年度の一時期、培養組織の増殖効率が極端に落ちたため、スクリーニングした個体数が実質的に少なかったため、目標とするレベルに達しなかった。この原因として、人工気象の不調により植物個体の状態が悪かったためと考えられるが、現在は改善されている。また、選抜薬剤として用いているハイグロマイシンのロットの違いにより、これまで使用していた 15 mg/l では濃度が高すぎることがわかり、現在では、5 mg/l の濃度を用いることにより、形質転換の効率が安定している。 一方、ESR1結合タンパク質のスクリーニングに関しては、予定通り、候補遺伝子を複数得ており、そのうちの1つEIC1は、タマネギ表皮細胞で発現させたときに核に局在することを明らかにした(Kubo, C. et al. Identification of proteins that interact with a plant nuclear protein using the yeast split-Trp sensor, Plant Biotechnogy, 印刷中)。この他、複数の候補遺伝子を得ており、現在、それらの遺伝子についても、細胞内局在や組換えタンパク質を用いた試験管内相互作用を解析中である。 これらのことから、ESR1発現制御遺伝子の探索については、やや遅れているが、ESR1結合タンパク質の探索については、論文発表できる段階に達していることから、概ね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ESR1発現調節遺伝子の探索については、現在では実験条件が安定しており、今年度前半でアクティベーションタギングの飽和レベルである10万のカルスのスクリーニングを行えると予測している。これにより、候補形質転換カルスが得られれば、今年度後半に染色体中のアクティベーションタギングベクターの挿入位置を同定し、その近傍の候補遺伝子を絞り込む。さらに、それらの候補cDNAを35Sプロモータの制御下で強制発現させ、ESR1の発現を誘導するかどうかを調べることにより、ESR1発現調節因子の同定を行う。 ESR1結合タンパク質については、現在、大腸菌で発現させた候補タンパク質と組換えESR1が実際に相互作用するかどうかを調べている。また、これらの遺伝子の培養組織中での発現パターンを解析するとともに、強制発現させたときにシュート形成能にどのような影響を与えるかを調べている。一方、これまでに20以上の候補タンパク質が得られているが、それらは必ずしも核タンパク質でないことから、擬陽性であると考えられる。そこで、候補タンパク質の精度を上げるために、現在行っているSplit-Trp法と従来のTwo-hybirid systemを組み合わせた方法を試みている。すなわち、現在得られている陽性コロニーから混合状態でプラスミドDNAを回収し、PCRでcDNAを増幅したのちに、そのcDNAを従来のtwo-hybrid systemのbaitベクターに挿入し、サブライブラリーを作製する。このサブライブラリーをESR1のC末端領域を組み込んだpreyベクターとともに酵母細胞に導入し、リポーター遺伝子の発現により相互作用するcDNAを探索する。これにより、split-trp法と転写制御によるTwo-hybirid法の両方で陽性となる候補タンパク質の同定を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ESR1発現調節遺伝子のスクリーニングにおいて、植物個体の育成状態の一時的な悪化から実験計画の一部で遅れが生じたため。 植物育成の状況は改善しており、今年度前半中に必要試薬、器具を購入する予定である。
|