2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞外基質アリールスルファターゼの分子環境の構築と形態形成制御機構の解明
Project/Area Number |
25440156
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中坪 敬子 (光永 敬子) 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40192760)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アリールスルファターゼ / 細胞外基質 / 分子構築 / 形態形成 |
Research Abstract |
細胞外基質アリールスルファターゼ(ArsB)による形態形成制御機構の解明を目的として、メダカを主に、ラットも併用して以下の研究を実施した。 (1)ArsBの分子環境の解明……ArsBを核とした細胞外基質の分子環境を解明するために、メダカ脳とラット肝臓を用いて、細胞外基質を保持した条件下で免疫染色を行った。メダカでは細胞外分泌型ArsBが脳に多く、第三脳室脈絡叢の髄膜由来の細胞にArsBの強い発現があり、上衣細胞頂端側にも弱いシグナルを検出した。菱脳室にもArsBの強いシグナルが検出され、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンと共局在していた。我々が細胞外ArsBを報告したラット肝臓では、類胴血管内皮細胞、肝実質細胞表層に加えて、ディッセ腔コラーゲン繊維上や密着結合にもArsBが局在することを免疫電顕により明らかにした。(2) ArsBの分子環境構築機構の解明……細胞外基質ArsBの分子環境を築く系を明らかにするために、樹脂包埋したメダカ脳の前頭断と矢状断切片を作成して、脳の内部構造を確認した。第三脳室では発達した脈絡叢を認めた。菱脳室の脈絡叢の発達は悪かったが、菱脳室底に上衣細胞が特殊化した分泌細胞があり、細胞間をムコ多糖が占めていた。ArsBの細胞外への分泌経路は脳室ごとに異なる可能性がある。肝臓では、ArsBは主に肝実質細胞で合成され、分泌されていることを、ラットのin situハイブリダイゼーションにより示した。(3) ArsB発現異常の影響解析……TILLING法によりArsBのスルファターゼドメインのアミノ酸が変異したメダカを作成したが、外部形態、運動能力に対する影響は低く、TALENによりスルファターゼドメインを破壊した個体を作成し、解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、細胞外基質ArsBの組織特異的な分子環境とその構築システム及びArsBの変異が形態形成に及ぼす影響を解析することにより、ArsBによる形態形成制御モデルの構築を目指している。ラット肝臓において、これまで報告してきた血管内皮細胞表層に加えて、新たにコラーゲン繊維上、密着結合にArsBの発現を確認し、それらが主に肝実質細胞で合成されていることを示したことにより、肝血管系を介したArsB の細胞外基質環境形成に関する基盤情報を得ることができた。また、メダカ脳では、分泌されたArsBが脳全体を満たしていたが、第三脳室では典型的な脈絡叢を、菱脳室底には、分泌細胞を検出でき、脳脊髄液循環を介した細胞外基質環境の形成機構が示唆された。今後は、肝臓と脳の細胞外基質ArsBの分子環境と構築機構の比較を進めていきたい。脳の構造解析に伴い、免疫染色には、凍結切片に加えて、構造をより維持した固定組織を用いることが必要となり、対応している。ArsB発現異常メダカについては、スルファターゼドメインのアミノ酸変異体に加えて、ドメインを欠失させた個体を作成したので、正常個体と両者を比較することにより、ArsBの機能解析を推進することが可能になった。以上の解析を統合して行い、検証することにより、研究目的をおおむね達成しうると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 細胞外基質ArsBの分子環境の解明……メダカ脳の第三脳室脈絡叢と菱脳室底の分泌細胞におけるArsBの局在を、脈絡叢や上衣細胞の分化マーカーとの多重染色や免疫電顕により詳細に解析する。肝臓のArsBの分子環境をメダカとラットを用いた免疫染色により調べ、比較する。ArsBと相互作用する因子を、脳脊髄液、血液等より、免疫沈降やアフィニティクロマトグラフィーにより得て、質量分析により明らかにする。 (2)細胞外基質ArsBの分子環境構築システムの解明……メダカの脳と肝臓の発生過程におけるArsB、細胞外基質等の発現領域を免疫染色、in situハイブリダイゼーションにより調べ、ArsB供給経路を絞り込む。脈絡叢におけるArsBの発現領域をメダカとラットで比較することにより、脳における細胞外基質供給経路の普遍性と多様性を明らかにする。 (3)ArsB発現異常の影響解析による機能の解明……メダカArsBの変異、欠損等の発現異常が、脳室の形成や肝臓の発生等の形態形成に及ぼす影響を調べることにより、細胞外基質ArsBの分子環境の形成における脳脊髄液循環や血管系の役割を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は、免疫染色の条件検討を連携研究者と分担して行ない、かつ変異メダカの成長を待つ必要があったため、研究旅費の支出が計画より減った。 変異メダカが成長してきたので、これらを用いた依頼解析の費用、世話の謝金及び研究旅費として、次年度に支出する計画である。
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