2013 Fiscal Year Research-status Report
“光励起”と“化学励起”を併用した生細胞蛍光観察技術の構築と実証
Project/Area Number |
25440162
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
星野 英人 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (20371073)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 灌流培養観察系 |
Research Abstract |
研究1)H2AX-BAFによるDNA傷害細胞での小核の出現頻度とその連続挙動の解析 既構築の変異型H2AX-eBAF-Y安定発現細胞株を用いて、DNA傷害を誘発する条件下での感受性について、小核の形成を指標に経時的に定点観察を実施し、観察タイミングの条件検討を行った。また、蛍光顕微鏡での長時間連続観察を行うに当たり、ペリスタポンプを用いた灌流培養観察系の構築を進め、幾つかの問題点を抽出した。その最たるものが、長時間の培地灌流に伴い、培地輸送ライン中に培地中の成分に由来すると考えられる気泡生成の問題である。輸液ラインで生じた気泡は培地とともに、観察細胞が存在する細胞培養チャンバー部に蓄積して、連続観察における致命的な障害を与える。この気泡生成自体を抑える工夫と、生成した気泡を輸液ラインから効率的かつ自動的に除去するデバイス創出という2点から当該問題解決に取り組んだ。デバイスに関しては実証試験中であり、特許性の有無を調査中である。 研究2)BAFを用いたケラチンイメージングによる皮膚表皮角化過程の完全可視化の試み 最終的にはマウスの初代培養系を利用する前提で、そのモデル系としてヒト皮膚由来の線維芽細胞株(GM0637細胞)を用いて当該研究で用いるFillagrin-eBAF-Y融合蛋白質の作製を進めた。また、OFP型BAF、或いは、RFP型BAFの融合用発現ベクターを新たに構築した。この過程で、Fillagrinと異なる、哺乳細胞には存在しない“ドメインX”とBAFを融合すると、BAF分子内で生じる共鳴エネルギー転移がより高効率化することを新たに見出した。この“ドメインX”の効果について特許出願を検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究計画を進めるための観察システム構築に際しての以下の問題が発生した。 恒温細胞培養観察系の立ち上げの遅れが、初年度の研究計画遅延の主たる要因である。当初の実験計画では、観察初期に観察系に入れた培地のままで、新たな培地を追加・灌流させない、一般的なガラスボトムディッシュを使用する閉じた恒温(37℃)培養装置の採用を想定していた。取得予定装置(Chamride・IC-L-10)の本格導入の過程で、使用する既存蛍光顕微鏡・バイオレヴォBZ-9000(キーエンス社)のステージ耐荷重の上限が300g程度であることが、キーエンス社からの指摘で判明し、入手を想定した“Chamride・IC-L-10”(総重量が800g)は甚だ不適当であり、他社の製品の選択を一から行わざるを得ない事態となった。当初の予定を破棄し、顕微鏡の耐荷重性能を満たす、灌流式培養恒温チャンバー(180g)を新たに選定し、入手した。新たな装置の検討・選定から、納品後の一部部品の作り直しも含め、最終納品までに半年近くを要した。また、従来の“非灌流培養観察系”から培地を低速灌流させる“灌流培養観察系”を新たに選択し直したことにより、観察系を組む過程で、長時間観察を阻害する、灌流中に培地成分からの気泡発生の問題も顕在化し、この対処法の確立を急ピッチで進めているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に生じた未想定の問題の解決を早期に完了させることを、引き続き最優先で行い、実験計画の遅れを取り戻す。また、連携研究者の異動に伴い、当初計画で想定した化学発光観察装置の利用が難しい状況となっている。この問題に関して研究機関間の調整を急ぎたい。3研究機関間の共同研究契約等の問題が絡むため、解決が難しい場合には、当研究機関の設備のみでの観察を主体として進めて行く。その際、観察映像のクオリティは落ちることが予想されるが、本質的には問題はないと考えている。
|