2014 Fiscal Year Research-status Report
“光励起”と“化学励起”を併用した生細胞蛍光観察技術の構築と実証
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25440162
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
星野 英人 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (20371073)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 灌流培養観察系 / 発光イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究に関しては、以下の2系統で取り組んだ。 研究1)輸液チューブ内で派生する気泡への対処法の検討 昨年度、閉鎖系細胞培養用恒温チャンバーにおいて当初想定しなかった培地輸液ラインでの気泡発生の問題が生じた。情報収集の結果、閉鎖系細胞培養恒温チャンバー特有の構造的問題であり、当該装置の重大懸案であることが判明した。この問題を解決するため考案した、効率的且つ自動的に気泡を除去する“弁デバイス”に関し、既製プラスチック製品の加工や、熱溶融積層型3Dプリンターを用いた部品試作により当該デバイス実現の可能性を探った。当該装置はシンプルな構造だが、試作部品の精度に限界があり使用に耐えるデバイスの作製には至っていない。但し、特許調査並びに弁理士との検討から作製できれば十分な特許性が見込まれる。 研究2)BAFを用いた生細胞イメージングへの取組 Biorevo BZ-9000を主要装置としてのイメージングに方針変更し、かつ上記の事情により想定した長時間連続観察が難しくなった状況になっている。昨年度、予期せず見出した、BAF分子内で生じる共鳴エネルギー転移をより高効率化させ、且つ細胞に内在しない人工ドメイン“hCBD” とBAFとの融合体“hCBD-BAF”に着目し、BAFの化学発光プローブとしての高輝度化と細胞内局在を示す発光タグとしての可能性を検討した。hCBD-BAFの培養細胞内での局在性を検討しBAF単体と遜色なく細胞全体に分布すること、H2AXとの融合体が、BAFとの融合体同様に核局在示すことを新たに確認し、1件の特許を出願した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
化学発光観察装置使用にあたって、研究連携する想定であった連携研究者の予期せぬ他研究機関への異動に伴い、計画当初に予定していた当該装置の利用が難しい状況で、異動前後の研究機関と私の所属する研究機関との間での3研究機関間の共同研究契約も内々に検討してみたが、異動前の研究機関に連携研究者の足場が既に失われていることから現実的に難しい状況にある。 一方で、BAFの高輝度発光により、汎用型蛍光顕微鏡システムでも最大感度条件で化学発光観察は可能である。しかし、その際に用いる長時間の連続観察に必要な観察用閉鎖系灌流培養チャンバー系での培地輸液チューブ内で培地から発生する気泡が観察細胞培養領域へ浸入することにより、長時間培養を行うと細胞が干上がり死滅する事態(本質的なシステム上の欠陥と思われる)に遭遇しており、研究遂行上、計画当初想定しなかった重大な障害となっている。この問題を解決すべく、シンプルな気泡除去用の弁デバイスを考案し、当該弁の試作を精力的に進めたが、2年次中には良好な結果を得られなかった。当該弁デバイスの発想自体は間違っていないと考えるが、当該デバイスを実現するために必要な部品の加工精度を上げる必要がある。目的に合致する既製部品を継続して探してはいるが、現時点では解決の目処が立っていない。更に、年度半ばにチャンバーの液漏れ事故による故障問題も発生し、原因究明と破損部品の調達に時間を要したことも達成度を遅らせている一要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
プラスチックの金型成形による一点ものの部材作製アプローチは現時点では予算的に困難であるが、密閉精度の高い部材が入手できれば実現可能なデバイスであるので、低予算で試作品製造を請け負ってくれる企業を探す努力を続ける。一方で、引き続き既製のプラスチック・樹脂製品を利用する方策で初年度に生じた未想定の気泡発生問題の早期解決を目指す。また、これと並行して、従来方針を少々修正して輸液チューブ内で発生する気泡の影響を最小化するように、より適切な観察タイミングと当初計画よりも短縮した観察時間での生細胞イメージングを想定する。通常の培養条件での観察がし易いH2AXに関して優先的な観察対象とし、対象タンパク質の挙動を詳らかにするアプローチを進める。そのために、細胞を死滅させない程度に、DNA傷害を誘導する薬剤濃度を大幅に上げるなどして、観察対象細胞の出現比率を増加させると共に、発光プローブの使用に関しては、複数種あるBAFの中から発光輝度が最も高いeBAF-Y、或いは、新規のhCBD-eBAF-Yに絞り込み、改めて諸条件検討を行う。BZ-9000を用いて化学発光輝度の観点からeBAF-YよりもhCBD-eBAF-Yの使用の方が生細胞レベルでも化学発光イメージングに適当と判定されれば、hCBD-BAF-YタイプのH2AX融合タンパク質の安定発現細胞を構築する。この見極めは早期に済ませる。最終的に今年度中に既存蛍光顕微鏡システムでも、安定した、連続性のある化学発光イメージングが可能であることを示す。
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Research Products
(1 results)