2014 Fiscal Year Research-status Report
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25440173
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
黒川 信 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50211222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 浩輔 杏林大学, 保健学部, 教授 (50236585)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 消化管運動 / 消化管神経系 / アメフラシ / トゲアメフラシ / モノアラガイ / 末梢神経系 |
Outline of Annual Research Achievements |
消化管に内在する消化管神経系(腸管神経系)は数多くの多様なニューロンから構成され、動物界の種の広範にわたり普遍的に存在する。消化管神経系は中枢神経系と連関しながらも運動、分泌、吸収などの生理機能を自律的に制御している。一方、動物の消化管の構造と機能は体制や食性等に応じて多様に分化しており、個々の消化管においても部域特異的な大きな変化が起きている。従って、消化管神経系の構造と機能も進化の過程で普遍的特性を保存するとともに多様な分化を遂げているものと推測される。消化管神経系についてこれまで哺乳類と軟体動物の中のモデル動物で研究が行なわれているが、ニューロンレベルでのアプローチが、技術的な困難さなどからあまり行われていない事もあって、系統進化的視点からそれを広く解析する試みは殆ど行なわれていない。我々は、消化管神経系の自律的な神経機構を明らかにするとともに、それと中枢神経系との連関機構にも注目して研究を進めてきた。 後鰓類のアメフラシとトゲアメフラシの食性はそれぞれ海藻食、付着藻類食と異なり、また消化管構造は前者のそ嚢が後者より著しく大きいなどの違いがある。我々は先ず、消化管自律運動のリズムは両者とも消化管神経系に内在するニューロン群のペースメーカーを起源とする神経原性であることを示した。ペースメーカーニューロン群はトゲアメフラシではそ嚢上に、アメフラシでは後砂嚢上に局在していた。運動画像解析システムにより、消化管系全体標本で神経活動と各部位の運動を同時記録した結果、トゲアメフラシではニューロン活動がそ嚢から後砂嚢に向かって下向的に伝播するとともに収縮も伝播したのに対し、アメフラシでは逆に後砂嚢からそ嚢に向かって両者とも上向的に伝播していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
消化管系全体標本により食道からそ嚢、前砂嚢、後砂嚢の各部位の運動を詳しく記録するために、自動追尾によりポイント間の距離変化を測定する運動解析システムの精度を高めるいくつかの技術的改良を行い、それに若干時間がかかった。しかし、同時に消化管神経系ニューロンの活動を単一ニューロンレベルで同時記録出来るようになったことで、両者の相関の解析が進む様になっている。その結果、同じ後鰓類でありながらアメフラシとトゲアメフラシでは、神経活動と収縮の伝播方向が逆であることを発見できた。これらの成果は、昨年2015年夏に開催された国際神経行動学会・日本比較生理生化学会合同大会にて発表するとともに、本年(2016年)夏に開催される第9回国際神経行動学会で招待シンポジウムのオーガナイザー兼シンポジストとして発表する。論文発表には至っていないが、投稿準備中である。 中枢神経系との関係の解析が、予定より若干遅れ気味ではあるが、腹部神経節から出る貯精嚢神経の分枝が砂嚢に至り、消化管神経系のニューロン群に神経支配していることが明らかになったので、今後電気生理学的実験に取組む基礎ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の計画通りに研究を推進し、最終年度として研究を取りまとめる。これまで通り、2次元運動画像解析システムと消化管神経系の活動の記録を組み合わせつつ、それに新たに同定出来た貯精嚢神経分枝の自発活動記録や電気刺激を組み合わせる事で、これまで全く未知であった中枢神経系(腹部神経節)による消化管(神経系)の神経支配についての解析を優先的に推進する。これにより消化管の連動運動に対する中枢及び末梢神経機構の比較生理学的研究成果を取りまとめる。
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Causes of Carryover |
実験動物の入手が順調に行ったため、採集のための出張をしなかったため。また、代表者-分担者間で試薬を出来るだけ融通し合うことで当初予定支出額より減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ポーランドで行なわれる第9回国際比較生理生化学会議のシンポジウムの一つとして代表者は「Comparative physiology of gastrointestinal tract and enteric nervous system」をオーガナイズしており、分担者も演者の一人として本研究の成果を発表する。学会出張費として当初計画より若干多いの費用が必要であり、それに充当する計画である。
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Research Products
(3 results)