2014 Fiscal Year Research-status Report
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25440183
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
熊田 和貴 沖縄科学技術大学院大学, G0細胞ユニット, 研究員 (10370149)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 姉妹染色分体分離 / ゲノム不安定性 / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞がゲノムを安定に維持するには、分裂期において姉妹染色分体間の対合を切断し、染色体分離を引き起こすプロテアーゼ、セパラーゼの適切な活性制御が重要である。申請者はほ乳類のセパラーゼが分裂期の異なる時期に様式の異なる複数の自己切断を行うことを既に見出している。本研究は、こうしたそれぞれの自己切断の性質や制御の解析を行い、その生理学的な意義を解明することによって、分裂期におけるセパラーゼの急激な活性化機構について明らかにすることを目的としている。 昨年度までに、BAC mutagenesisの系を用いて、マウスのセパラーゼを変異させ、特定の自己切断が起きないように細工した変異セパラーゼを作製し、これをヒト子宮がん由来のHeLa細胞に導入して、変異セパラーゼの安定発現細胞株を取得している。また既に、なるべく生理的な条件下でのこれらの特定の自己切断が起きない変異タンパク質の機能を調べるため、作製したマウス由来の変異セパラーゼ安定発現株において、内在性の野生型ヒトセパラーゼのみをRNAiによって除去することにより、外来性の変異セパラーゼと内在性の野生型セパラーゼを完全に置き換えることができる系も確立していた。 昨年度は、これらの細胞と系を用いて、特定の自己切断が起きない条件下での細胞や染色体の挙動を調べ、それによって、それぞれの自己切断が持つ性質や制御についての解析を行った。いくつか興味深い知見を得ており、現在、さらなる解析を進めている。 また、分裂酵母において昨年度見いだして解析を進めていた短いセパラーゼ産物については、結局、切断によるものではないことが判明したが、その一方で、分裂酵母セパラーゼの必要性が栄養条件で異なることが明らかとなり、現在外部の栄養条件の変化に対する応答について解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は研究施設を移動したこともあり、余計な調整に時間を取られ、思っていたほどには解析を進められなかった。しかしながら、本研究の進行に必要な変異株や実験系の確立は既に終わっていたため、昨年度は順調に解析を進めることができ、十分に遅れを取り戻せたのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、特定の自己切断が起きない条件下での細胞や染色体の挙動を、生化学的手法や細胞生物学的手法を用いて調べることで、それぞれの自己切断が持つ性質や制御、および生理学的な意義についての解析を進める。また、同時に、セパラーゼの自己切断並びに活性制御に影響を与える因子・シグナルの同定も引き続き試みる。さらに、試験管内でのセパラーゼ活性をモニターする系を構築してセパラーゼ活性化機構を試験管内に再構築することを目指したい。また、平行して分裂酵母を用いた解析も行い、セパラーゼ機能・制御の種間を超えた普遍性についても検討を行う。さらに、最終的にこれらの得られた結果と考察について、論文等の形でまとめたい。
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Causes of Carryover |
26年度は、昨年度までの遅れを取り戻して、ほぼ予定通りに研究を進めることができたが、その一方で、研究成果の発表等に当てる十分な時間的余裕を取ることができなかった。このため、研究成果の発表等で使う予定であった旅費・その他の費用を使用しなかった。また、研究の一部について、当初予定していたヒト培養細胞ではなく、現在の研究室で主に使われている分裂酵母細胞を用いたことによって、実験に使用する試薬や実験器具等にかかる費用を安く抑えることができた。これらの理由により、当初予定よりも実際の使用額が低くなっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、一部の解析に分裂酵母細胞を積極的に使用することで、研究の進展速度が上がると同時に、これまでとは異なる制御の側面が明らかになることを期待している。これらの研究を推進するためには、新たな試薬や実験器具等の購入費が必要となる。また、研究成果の発表についても、昨年度までに時間が取れなかった分、新たに成果発表・討論の機会を作る必要があり、このための旅費・その他の費用も必要となる。こうした目的のために昨年度までに使用しなかった差額を使用したいと考える。
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