2013 Fiscal Year Research-status Report
体細胞エピゲノム情報の系統解析による哺乳類の細胞系譜および細胞分化過程の推定
Project/Area Number |
25440186
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小柳 香奈子 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (20362840)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 系統解析 / 細胞分化 / エピジェネティクス / DNAメチル化 / 細胞系譜 / 祖先復元 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
細胞は各組織・器官へと分化する過程において、自己の遺伝子発現情報の変化を記憶しながら分化してゆく。この細胞の記憶は、ゲノム上のエピジェネティック修飾という形で記録される。分化した多様な細胞は独自のエピジェネティック情報を持ち、細胞分裂後もこの情報は基本的に継承されることが知られている。しかしながら多くの場合、その変遷過程を観察することは困難を伴う。そこで本研究は、体細胞エピゲノム情報の系統解析からin silicoで哺乳類の細胞系譜を構築、さらに祖先節の形質状態すなわち発生過程の細胞のエピジェネティック修飾状態の推定を試みる。これにより各種細胞の分化過程を推定することを目的とする。 2013年度は、細胞系譜およひゲノムDNAメチル化情報が既知であるマウスの血球系細胞をモデルケースとして解析を行い、以下の成果を得た。 ①エピゲノム情報(ゲノムDNAメチル化情報)の特性解析:単純な変化(増加/減少)をするサイトと複雑な変化をするサイトの比は10:1程度であることがわかり、系統解析に適したサイトの存在が示唆された。 ②系統解析:①のDNAメチル化情報に基づき、最節約法および最尤法を用いて系統樹および祖先節の推定を行った。推定された系統樹と既知の細胞系譜との比較を行った結果、既知の細胞系譜を概ね反映する結果が得られた。また、推定された祖先節の状態と細胞分化途中の前駆細胞のDNAメチル化情報との比較を行った結果、~7割程度が正しく推定されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデルケースとして用いたマウス血球系細胞において、本研究の提案手法であるエピゲノム情報の系統解析により、その細胞系譜および発生過程の細胞のエピジェネティック修飾状態の推定が可能であることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度の系統解析ではDNAメチル化情報を二値化して解析を行ったが、連続値のまま解析することで精度が向上する可能性がある。またDNAメチル化のON/OFFのパラメータについても詳細な検討が可能である。これらを含む提案手法のさらなる改良を行う。 上記のモデルケースで得られた知見に基づき、マウス成体の各種体細胞のエピゲノム情報を用いた系統解析を行い、細胞系譜および各種細胞が分化する過程のエピゲノム状態の変遷を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
解析サーバの購入を予定していたが、所属大学の計算機資源が利用可能となったため、次年度使用額が生じた。 人件費等に利用することで効果的に研究を進める。
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