2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25440189
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
二階堂 雅人 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (70432010)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | フェロモン受容体 / 脊椎動物 / 進化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、我々が新規に発見したほぼ全ての脊椎動物ゲノム中に共通に存在する唯一のフェロモン受容体遺伝子(ancV1Rと名付けた)の生理機能を明らかにし、魚から哺乳類まで共通の生殖認知システムの存在をつきとめることである。現在までにancV1Rは広範な脊椎動物のゲノム中に存在することは分かっていたが、その鋤鼻器における発現は実験的に示されていなかった。そこで今回は、古代魚からポリプテルス、両生類からネッタイツメガエル、そして哺乳類からはマウス、ヤギを選別し、嗅覚・鋤鼻器官におけるancV1RのmRNAの発現の有無を、RT PCRもしくはin situ ハイブリダイゼーションにより検証した。その結果、マウス・ヤギにおいてin situ ハイブリダイゼーションによって鋤鼻上皮全体に渡るancV1Rの発現が観察され、このグループにおいてancV1Rがフェロモン受容に重要な役割を果たしていることが示唆された。またポリプテルス、ネッタイツメガエルにおいてはRT PCRレベルでのancV1Rの発現は確認されたが、in situ ハイブリダイゼーションでは明瞭なシグナルが観察されなかった。ancV1Rはフェロモンを受容する神経細胞全体に弱く発現する傾向にあると予想され、in situ ハイブリダイゼーションによる発現の検出が難しいことが分かった。また、哺乳類のいくつかの種(類人猿、コウモリ類、鯨類)においてはancV1Rが偽遺伝子化しており、これは鋤鼻器官の退化パターンと強く相関しており、このことからもancV1Rがフェロモン受容と強く関わっていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ancV1R遺伝子が広範な脊椎動物のゲノム中に存在することのみしか明らかになっていなかったが、2013年度中の実験によってancV1Rが鋤鼻・嗅覚器官で発現していることを明らかにすることができた。また、ゲノムデータベースのより詳細な検索により鋤鼻器官の退化した種においてのみancV1Rの偽遺伝子化が確認されたことも大きな成果であると考えている。以上、研究は予定通りに進行していると考えてよい。
|
Strategy for Future Research Activity |
ポリプテルスやネッタイツメガエルにおいてはin situ ハイブリダイゼーションによるシグナルが確認できず、さらにはRT PCRにおいてもその発現がポジティブコントロール(OMP)と比較して明らかに少ないことが分かった。我々はこの理由として、実験に使用したポリプテルスやネッタイツメガエルが生殖段階に入っていなかった可能性があると考えている。つまり生殖のタイミングと同調して嗅神経におけるancV1Rの発現が上がる可能性があると予想している。その可能性を検証するために、今年度においてはポリプテルス、ネッタイツメガエルに生殖腺刺激ホルモンを注射することで、人工的に交配のタイミングを誘導し、それから嗅上皮におけるancV1Rの発現をin situハイブリダイゼーションもしくはRT PCRで調べたいと考えている。また、鋤鼻神経細胞にて発現が知られている遺伝子(例えばTRPC2)の偽遺伝子化のパターンとancV1Rの偽遺伝子化のパターンを比較し、それらの整合性を調べる。最終的にはancV1Rの機能を明らかにする目的でCrispr/Cas9システムを用いたancV1Rノックアウトマウスの作成を視野に入れて実験を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験計画にあるノックアウトマウスの作製に着手しようとしていたが、その部分の実験が遅れているため、その研究にかかる予算を翌年度予算とした。 次年度使用に繰り越した予算を用いてノックアウトマウスの作製準備を開始したいと考えている。
|
Research Products
(4 results)
-
-
[Journal Article] Coelacanth genomes reveal signatures for evolutionary transition from water to land.2013
Author(s)
Nikaido M, Noguchi H, Nishihara H, Toyoda A, Suzuki Y, Kajitani R, Suzuki H, Okuno M, Aibara M, Ngatunga BP, Mzighani SI, Kalombo HW, Masengi KW, Tuda J, Nogami S, Maeda R, Iwata M, Abe Y, Fujimura K, Okabe M, Amano T, Maeno A, Shiroishi T, Itoh T, Sugano S, Kohara Y, Fujiyama A, Okada N.
-
Journal Title
Genome Research
Volume: 10
Pages: 1740, 1748
DOI
Peer Reviewed
-
-