2013 Fiscal Year Research-status Report
漁業活動による生活史形質と行動形質の進化:その遺伝的基盤の解明へ向けて
Project/Area Number |
25440190
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松村 秀一 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (30273535)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 進化 / 漁業 / 生活史 / 遺伝的基盤 |
Research Abstract |
本研究は、漁業活動が引き起こす生活史形質や行動の進化の背後にある遺伝的基盤の解明を目的とする。具体的な研究対象は、長い年月をかけた「家畜化」により行動に差異を生じた複数の魚の集団(系統)、および漁業活動を模した選抜実験により生活史形質に違いを生じた魚の集団である。前者に関しては、コイの2系統について、注目する遺伝的領域を決定し予備的分析を開始した。具体的には、これまでの実験から遺伝的な多型が知られているMAO(モノアミンオキシダーゼ)に加え、アルギニンバソトシン等、他の種において攻撃性や気質に関連することが報告されている神経伝達物質の遺伝子領域の塩基配列を調べ始めた。後者に関しては、ドイツ等の研究者と協力して、ゼブラフィッシュについて遺伝的解析を進めた。その結果、生活史形質に関連する遺伝的な違いを示唆する重要な発見があった。ゼブラフィッシュをモデル生物と考え、生活史形質の急速な変化が漁業活動にもたらす影響についての考察を含めた形で、現在、学術論文として発表する作業を進めている。一方、アメリカ合衆国の研究者との間で研究分担について話し合いを進めた結果、オオクチバスについてサンプルを無事入手することができた。次世代シークエンサーを利用して関連遺伝子を網羅的に探索することを目指し、遺伝学的な実験を開始した。こちらについては、娯楽としての釣り活動が魚個体群にもたらす影響、特に行動形質に対する影響について具体的に明らかにする格好の材料となることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としてみると、本格的なゲノム解析に基づく成果はまだ得られていない。しかし、ゲノムワイドのSNP解析から重要な結果を得ることができ、論文投稿の段階へ進んでいる。また、当初計画には含まれていなかったオオクチバスについて貴重なサンプルを得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、ゼブラフィッシュとオオクチバスについて、次世代シークエンサーを活用した遺伝的解析を進める。コイについては、遺伝学的実験を進めるとともに、最終年度に行動学的実験を実施することを目指した準備をおこなう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では、次世代シークエンサーによる解析を外部に依頼する予定であったが、サンプル入手の時期が遅れたため、それが次年度以降に繰り越された。 平成26年度以降の助成金とあわせ、当該年度におこなう予定であった次世代シークエンサーを利用した解析をおこなう計画である。
|