2015 Fiscal Year Research-status Report
タイプ標本の再検討に基づく日本産イソギンチャク類の分類の確立と同定ツール開発
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25440221
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
柳 研介 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員 (00321852)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イソギンチャク / タイプ標本 / チャレンジャー号 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も引き続き、本邦産のイソギンチャク類のライプ標本の探索、精査を行った。本年は主に、1872~1876年に行われたイギリスの科学調査船H.M.S.チャレンジャー号による探検航海のうち、日本近海で採集され、その後Richard Hertwigによって記載された7種のタイプシリーズを調査した。これら7種のうち4種はタイプ標本以外の記録が無く、2種についてはその後の採集記録があるものの、分類学的な検討が不十分であり、それらの同定には少なからず疑問点がある。また原記載は、現在、分類学的研究に用いられている重要な形態形質の記載を欠いているため、新たに得られた標本を近縁他種から識別してこれらの種に同定することは困難であった。タイプ標本の調査は、チャレンジャー号航海の標本が収蔵されているThe Natural History Museum (ロンドン自然史博物館:英国)において実施し、上記7種のうち5種のタイプ標本を確認した。これらタイプ標本について外部形態観察の観察、写真撮影を行った。また、刺胞相観察プレパラートを作成し検鏡ならびに観察されたすべての刺胞の写真撮影を行った。 国内における比較標本は,タイプ産地を含む各地(鹿児島県奄美大島、喜界島、北海道各地、伊豆下田)において実施し,写真撮影,DNA用組織片の採取,形態観察用の標本作製を実施した.また、申請者の所属を含む各施設の収蔵標本の調査を行い、本年度までに観察できたタイプ標本との比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本邦産のイソギンチャク類のタイプ標本を所蔵している各博物館での調査はほぼ順調に進み、失われていると考えられる少数のタイプ標本を除き、全てのタイプ標本の調査を浣腸した。しかし、タイプ標本と新規採集標本または各施設に収蔵されている標本から得られるデータの蓄積が進んでおらず、両者の比較検討がやや遅れている。また、本年度については、Edwardsia clavataのタイプ産地である喜界島での調査において、当該種と思われる標本を採集できなかった。奄美大島においては、可能性のある種が採集されたが、複数種の存在が示唆されたことに加え、原記載及びタイプ標本からの情報からは、それらの同定の判断が困難であったため、再度、喜界島での新規標本の採集を試みる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
タイプ標本の調査については、計画どおり完了し、現存する日本産のイソギンチャク類のタイプ標本は全て検討できた。また、これらのタイプ標本の外部形態の観察から、おそらく同一種と判断される比較検討用標本を各地から得ることができており、両者の詳細な比較(特に刺胞形質の精査)を開始しており、一部についてはその成果を論文発表した。今後、この作業を継続し、調査したタイプ標本全てについて、新規標本の検討を伴う再記載を行う。同時に、新規標本の検討から、タイプ標本からは得られなかった色彩情報などに基づいた種同定のキーを見つける作業を行う予定であり、これらの結果はウェブサイト等を通じで公開する。
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Causes of Carryover |
DNA解析作業の遅れのため、試薬類の購入が少なくなったこと、またそれに伴うシーケンシングの外注が進まなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度予定していたDNA解析作業の未実施分を次年度に実施する。これに伴う必要試薬類の購入およびシーケンシングの外注を次年度行う。
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