2015 Fiscal Year Research-status Report
渡り鳥種子散布による水生植物のアジアーオセアニア隔離分布の存在と成因の解明
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25440224
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
田中 法生 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10311143)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 進化 / 水生植物 / 隔離分布 / 渡り鳥 / 種子散布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、南北両半球の温帯域に隔離分布する種の存在と成因を、渡り鳥による長距離種子散布を仮説として、分子系統解析および遺伝的構造解析を用いて明らかにしようとするものである。27年度は、これまでの継続として、研究材料の収集および解析を行った。具体的な進捗状況と成果は以下の通りである。 26年度から取り組んできた旧イトクズモ科(ヒルムシロ科アルテニア属、レピラエナ属、イトクズモ属、シュードアルテニア属)について、葉緑体DNA(matK, ndhF, rbcL, rpoB, rpoC1)と核DNA(phyB)の塩基配列情報から分子系統解析を行った。その結果、レピラエナ属は単系統群ではなくアルテニア属を内群に含む側系統群であることが明らかとなったため、広義のアルテニア属として分類の組み替えを行った。さらに、分岐年代および生物地理学的解析により、オーストララシア、地中海・ユーラシア、南アフリカの間での長距離散布が、種間および種内で5回起こっていると推定された。 26年度から取り組んできたカヤツリグサ科ビャッコイ属について、葉緑体DNA(rbcL, rps16, trnL)および核DNA(ITS)の塩基配列情報を用いた分子系統解析を行った。その結果、ビャッコイ属fruitantes亜属の中で、アフリカ/ヨーロッパの種群とアジア/オーストララシアの種群に分かれることが明らかとなった。これは、分岐年代を考慮すると、両地域間の長距離散布によって生じた可能性が高いと考えられた。 26年度に解析を行い結果を得たガマ科ミクリ属については、論文を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
旧イトクズモ科およびビャッコイ属においては、本研究の目的に合致した結果が得られ、本研究の目的である水生植物の長距離散布の存在を複数例明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
トチカガミ科イバラモ属、オオバコ科ミズハコベ属などについても同様な研究方法で推進し、水生植物の長距離散布の事象をさらに示すことを目指す。
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