2015 Fiscal Year Research-status Report
日本と韓国における大規模干拓の閉門・開門に伴う底生動物群集の変化の比較
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25440229
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
佐藤 慎一 静岡大学, 理学部, 准教授 (70332525)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 底生動物 / 大規模干拓 / 諫早湾 / 有明海 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,日本と韓国の大規模干拓周辺海域において,閉門・開門の実施前後に見られる環境変動とそれに伴う底生動物群集の変化を調べることを目的とする.そのために,有明海の諫早湾干拓や韓国セマングム干拓などの工事予定海域において,潮受け堤防内外の定点で採泥調査を定期的に実施し,そのデータを比較することで,大規模干拓事業が周辺海域に及ぼす影響の普遍性を明らかにして,今後の大規模干拓事業によって引き起こされる環境変動を予測することを目指している. 本年度は,2015年6月7日から11日にかけて,有明海全域100定点と諫早湾干拓調整池内16定点における採泥調査を実施して,各定点における水質・底質・底生動物の種構成などを明らかにした.有明海全域では,過去にも1997年6月・2002年6月・2007年6月に同様の採泥調査を実施しており,これら過去3回のデータと今回の調査結果を比較することで,潮受け堤防閉め切りから18年後の有明海全域における環境・生態系変化を明らかにできた.これらのデータは,今後の海水導入に伴う潮受け堤防内外の環境・生態系変化に対しても,同一精度で比較ができる基礎的データとして重要な役割を担うこととなる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,申請当時には確定判決である2013年12月の諫早湾開門開始が遵守されることを前提として,2014年度に有明海全域調査を実施する研究計画を立てていたが,その後も開門が実施されていないため,やむなく今年度に1年遅れで有明海全域調査を実施した.しかし,開門後の環境・生態系の変化を詳細に調べるためには,開門以前の同一レベルでの調査データが必要不可欠である.本研究は,早急に諫早湾の開門調査が実施されることを信じて,毎年着実に開門以前の調査データを蓄積させている点において,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
2016年4月現在で,諫早湾の開門調査は実施されていないが,放置したままでは有明海異変は解決できないことは明らかであり,近い将来に開門が実施される可能性は十分に残されている.本研究の本来の目的である開門後の有明海全域における採泥調査の実現に向けて,今後とも研究活動を粘り強く続けて行くと同時に,学会などの単位での要望書の提出や出版物の発行,研究集会などを通して,諫早湾の開門実施を促す努力をする.
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Causes of Carryover |
本年度は,有明海全域調査を実施することができたが,日程の都合のため韓国セマングム干拓の採泥調査が実施できなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,平成28年度申請額とあわせて,有明海奥部海域と韓国セマングム干拓における採泥調査に使用するとともに,もしも次年度内に諫早湾の開門調査が開始された場合には,周辺海域における複数回の採泥調査を実施する予定である.
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