2016 Fiscal Year Research-status Report
日本と韓国における大規模干拓の閉門・開門に伴う底生動物群集の変化の比較
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25440229
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
佐藤 慎一 静岡大学, 理学部, 教授 (70332525)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 底生動物 / 大規模干拓 / 諫早湾 / 有明海 / 韓国 / セマングム干拓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本と韓国の大規模干拓周辺海域において、閉門・開門の実施前後に見られる環境変化と、それに伴う底生動物群集の変化を調べることを目的とする。そのため、特に有明海の諫早湾干拓と韓国のセマングム干拓において、潮受け堤防内外の定点で採泥調査を毎年定期的に実施し、そのデータを比較することで大規模干拓事業が周辺海域に及ぼす影響の普遍性を明らかにして、今後の大規模干拓事業によって引き起こされる環境と生物相の変化を予測することを目指している。 本年度は、2016年6月13日に諫早湾干拓調整池内16定点の採泥調査を行い、続く6月15日と16日の2日間で有明海奥部50定点における採泥調査を実施した。また、8月14日から17日にかけて韓国セマングム海域における採泥調査を行った。有明海奥部では、絶滅危惧1A類に指定されるオオシャミセンガイが初めて採集されるなど、特筆すべき点もあったが、50定点の平均生息密度としては過去20年間で2番目に低い値であり、全体的に底生動物が減少傾向にあることが明らかになった。一方、韓国セマングム干拓では、大規模な貧酸素水が確認され、底生動物の平均生息密度は2007年以降で最低値を更新した。 両海域とも、依然として開門の兆しが見られないが、調整池内の水質の悪化と堤防外側海域における底生動物の減少傾向は明らかであり、いつかは開門をせざるを得なくなるのは自明の理である。その時のためにも、開門前のモニタリング調査を毎年実施し、開門後の環境・生物相変化の研究に対して、同一精度で比較可能な基礎的データを提供する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、国が福岡高裁の確定判決を遵守し、2013年12月の期限までに諫早湾開門を実施することを前提として採泥調査を毎年実施してきた。しかし、現在に至るまで開門が実施されておらず、早急の開門実施が求められる。その上で、開門後の環境と生物相の変化を詳細に調べるためには、開門前の同一定点・同一手法での調査データが必要不可欠である。本研究は、それを毎年欠かすこと無く着実に行い、開門前の調査データを蓄積させている点において、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在でも諫早湾の開門は実施されていないが、放置されたままで有明海異変は解決できないことは明らかであることから、将来的には開門が実施されることは自明の理である。今後も粘り強く本調査を継続させることで、開門後の有明海全域における採泥調査の実現に向けて努力をする予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度に実施する予定であった韓国セマングム干拓の採泥調査を実施しなかったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、6月の有明海奥部海域と8月の韓国セマングム干拓における採泥調査に使用する予定である。
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Research Products
(8 results)