2014 Fiscal Year Research-status Report
浅い湖沼におけるハス群落拡大がメタン食物網へあたえる影響
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25440232
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鹿野 秀一 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (70154185)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 湖沼 / 食物網 / メタン / プランクトン / メタン酸化細菌 / 魚 |
Outline of Annual Research Achievements |
宮城県北部に位置する浅い湖である伊豆沼においては、今までの炭素安定同位体比の分析から堆積物中のメタン食物連鎖系が重要であることが示されてきている。また、近年ハス群落の面積拡大に伴い湖水中で低酸素状態が起きやすい傾向があり、メタン食物連鎖が堆積物中のみならず湖水中にも拡大している可能性があり、これを検討することを目的としている。 前年度に引き続き伊豆沼の開放水面とハス群落内の定点において、毎月1回現地調査を行い、水温と溶存酸素濃度を環境条件を測定し、メタン濃度測定用サンプル、生物のサンプルおよびメタン酸化細菌用のサンプルを採集した。夏期のハス群落内では開放水面にくらべて、溶存酸素濃度は低下し、湖水中のメタン濃度は有意に高く、堆積物中からのメタンが水中まで拡大していることが確認できた。夏期に増大したメタン生成の結果、動物プランクトンの炭素安定同位体比は春に比べ夏から秋にかけて低下し、メタン食物連鎖系の影響を受けていることが示唆された。しかし、ハス群落内と開放水面で採集された動物プランクトンの間では差は見られなかった。魚類に関しては今年度は主にブルーギルについて安定同位体分析を行ったが、秋に採集されたブルーギルは春から初夏に採集されたものと比べ、炭素安定同位体比が低い傾向がみられ、今後炭素安定同位体比の値が低下した動物プランクトンのエサとしての寄与を検討する必要がある。 昨年度メタン酸化細菌に特異的なプライマーを用いて水中からもメタン酸化細菌が検出できたので、今年度はメタン細菌群集組成についてDNA分析による検討を行った結果、堆積物中では群集組成は変化が見られなかったが、水中では季節変動することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はハス群落内と開放水面に各1カ所の定点をもうけ、毎月溶存酸素濃度とメタン濃度の測定、プランクトンの安定同位体比の測定を行ったが、今年度はこれらのサンプリングに加えて、統計的な検討ができるようにハスの生育前の6月と生育期の8月にハス群落内と開放水面でそれぞれ3カ所ずつ地点を選び、これらの測定を行ない、地点の違いではなくハス群落の有無によって溶存酸素濃度やメタン濃度に差があることも確認できた。 メタン酸化細菌については、系統分類から主にType I とType II の二つのグループの存在が知られているが、伊豆沼においては両方のグループが環境DNAから増幅できた。動物プランクトンなどの安定同位体分析も秋までのサンプルについては測定が完了しているが、今後秋から冬にかけてのサンプルの分析を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、今まで2年間の堆積物中と水中のメタン濃度のデータと動物プランクトンや魚類の炭素安定同位体比のデータの関係について解析し、ハス群落の生育によるメタン濃度と安定同位体比への影響とメタン食物連鎖の波及について検討を行う。また、春先からハス群落が生育するまでの期間のハス群落内と開放水面について、ハス生育前の堆積物と水中のメタン濃度のデータが初年度(25年度)は測定回数がすくなかったので、春先の補足調査測定を行う。 メタン酸化細菌群集に関しては、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法による群集構造のパターンの違いだけでなく、ゲルよりバンドDNAを切り出し、シーケンサーで塩基配列を決定することにより、群集を構成しているメタン酸化細菌の種類を推定することも検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度請求額とあわせて、平成27年度の研究遂行に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)