2013 Fiscal Year Research-status Report
外来生物除去後に目指すべき群集の推定方法-小笠原の外来植物の例-
Project/Area Number |
25440234
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小池 文人 横浜国立大学, 環境情報研究院, 教授 (20202054)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 外来生物 / 在来生態系復元 / 小笠原 / アカギ / 立地解析 / 種特性 |
Research Abstract |
小笠原諸島母島において外来植物アカギ除去後の回復目標とすべき生態系の推定をめざして,初年度は多様な群集での植生調査と,多種の種特性調査を開始した. (1)群集の植生調査:最も高度の高い乳房山地域において,湿性低木林とモクタチバナ亜高木林の植生調査を行った.モクタチバナ亜高木林はアカギの侵入が顕著であり純林は希少になってきているため緊急の調査が必用である.湿性高木林については桑の木山地域にて調査を行った. (2)種特性調査:島内の多くの種において促成する予定であるが,まず初めに,アカギの最大樹高について母島全域(乳房山山塊の海岸から山頂まで,南崎方面~北方面まで)での分布を測定した.回帰モデルを利用した解析によると,アカギの最大高は山の中腹で最大となり,山頂や海岸,山塊から離れた半島では小さくなっていた.最も樹高が高いのは高度150m-200mにある谷間で樹高20mを超える高さとなる.海岸近くの尾根では樹高8m程度,山頂の尾根では樹高4m程度であった. 観察結果として,はじめて訪れた1980年頃や集中的に調査を行っていた1990年代と比べて,登山道沿いではアカギの優占度が高まりうっそうとしてきている.当時林冠を形成していたムニンハツバキの同じ個体が,すでにアカギに覆われて枯死しかけていた.かつてはアカギの樹冠下にもモクタチバナの下層植生が存在したが,現在ではアカギが優占している地域では下層のモクタチバナも消滅しつつある.アカギの除去作業も進行中であるが,在来植生の優占種(亜高木層)であるモクタチバナが消滅する前にアカギを除去しなければ,もとの生態系の回復は困難に見える.小笠原で最も自然が豊かな母島では,同じ世界自然遺産の屋久島などと比較して研究が遅れているが,学生などが安価に長期滞在して研究できる宿泊施設があれば,研究レベルが飛躍的に向上する可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
あらかじめ設定した年次計画に沿って進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,調査対象とする群集のタイプや地域,対象とする生物の範囲を拡大して調査を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たな現地調査を行ったり,新たな物品を購入するためには不足する金額の残額であったため,次年度使用額とした. 2015年度はさらに長期にわたる現地調査を予定しているため,2015年度に全て使用する予定である.
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