2015 Fiscal Year Research-status Report
外来生物除去後に目指すべき群集の推定方法-小笠原の外来植物の例-
Project/Area Number |
25440234
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小池 文人 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (20202054)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生態特性 / 群集予測 / 外来生物 / 保全 / 小笠原諸島 / 海洋島 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度には種特性のひとつとして,主に小笠原諸島母島周辺において植物の耐陰性の測定を行った.この調査ではライン上の規則的な位置に地点を設定し,そこから最近接の個体を種ごとに測定することで,恣意的でないサンプリングを行った(Koike 2001).普通種では地点間隔を長くすることで広域からまばらなサンプリングを行うことができる.また植物が作り出す環境とさまざまな外来生物の分布の関係を知る目的でライントランセクトによる分布調査を行った. 野外調査では全天写真を撮影し,自作の自動読み取りソフト「空と森」を利用して相対光強度をもとめ,種ごとの耐陰性を求めた.対象種は外来種のギンネム,セイロンベンケイソウ,サンセベリア,アカギ,オオバナセンダングサ,キバンジロウ,シマグワ,テリハボクなどや,在来種のアカテツ,ヤンバルタマシダ,ムニンテイカカズラ,アデク,ムニンイボタ,オオバシマムラサキ,シマギョクシンカ,キンモウイノデ,オガサワラクチナシ,ムニンイヌグス,コヤブニッケイ,オガサワラシコウラン,シマオオタニワタリ,シマザクラ,シマホルトノキ,シマシャリンバイ,ムニンシュスラン,オオシラタマカズラ,オガサワラススキ,タコノキ,タマシダ,ツルダコ,テリハハマボウ,トキワイヌビワ,トキワシダ,ハハジマノボタン,ハチジョウシダ,ムニンハツバキ,ヒメツバキ,オガサワラビロウ,ヘゴ,シマゴショウ,ホシダ,マルハチ,ムニンアオガンピ,モクタチバナ,オガサワラモクマオ,ワダンノキ,ヤロードなどであった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域に分布する生物の種特性から,その地域に成立する群集を個々の種の優占度のレベルまで予測する技術(Koike 2001)を利用して,新たな外来種の侵入や,根絶事業などによる人為的な除去後など,生物相のさまざまな変化の後での生物群集を予測することで,未来の望ましい自然を設計することをめざしている.調査地である小笠原諸島は海洋島であり,専門家アンケートによって最も外来生物対策が必用なハビタットと見なされている(小池ほか2015). これまでに,(1)ライントランセクトによる主な外来種と在来種の分布調査,(2)多様な立地の極相群集における種ごとの優占度調査,(3)極相群集において重要な種特性である最大高と耐陰性の測定,を行ってきた. 最終年度はこれらの情報を利用して,さまざまな立地における種特性をもとにした群集予測(群集全体の高さや,種ごとの植物高,種ごとの優先度の予測)を行う統計モデルを作成する予定である.このように予定された調査は順調に進捗している. Koike, F. 2001. Plant traits as predictors of woody species dominance in climax forest communities. Journal of Vegetation Science 12: 327-336. 小池文人・小出可能・西田智子・川道美枝子.2015. 専門家アンケートをもとにした一対比較による在来植物の脅威となる外来生物の重要度評価.保全生態学研究 20 : 87-100.
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Strategy for Future Research Activity |
この研究の目的は,地域に分布する生物の種特性から,その地域に成立する群集を個々の種の優占度のレベルで予測する技術を利用して,新たな外来種の侵入や,根絶事業などによる人為的な除去後など,生物相のさまざまな変化の後での生物群集を予測することで,未来の望ましい自然を設計することにある. これまで上記のように,(1)ライントランセクトによる主な外来種と在来種の分布調査,(2)多様な立地の極相群集における種ごとの優占度調査,(3)極相群集において重要な種特性である最大高と耐陰性の測定,を行ってきた. 最終年度はこれらの情報を利用して,さまざまな立地における種特性をもとにした群集予測(群集全体の高さや,種ごとの植物高,種ごとの優先度の予測など)を行う統計モデルを作成する.このモデルを利用して,複数の外来生物管理シナリオにもとづいた群集の将来予測を行い,最適な外来生物管理シナリオを探索する. シナリオとしては,(a) アカギやギンネムを含む母島の外来植物を全て除去した場合の極相植生の分布地図の作成,(b) 外来植物の除去全く行わない場合の将来の極相植生の分布地図の作成と将来減少する在来植物の評価(現在も外来種の優占度が上昇し続けている植生も多いと考えられる),(c)アカギやギンネム,モクマオウなどの単独種や特定の組み合わせの種のみを除去した場合の将来の植生予測,などを考えている. 当初に計画した研究の範囲を超えた将来の展開として,上記のような植生の変化が在来や外来の動物(グリーンアノールやオガサワラトカゲ,鳥類の営巣,各種の昆虫類の生息)に与える影響の予測や,逆に動物の存在下(父島のような野生化ヤギの被食圧下)での極相植生の予測(減少する外来植物と,被食下で消失するリスクのある在来植物)にも,発展可能とするようなタイプの予測モデルとする予定である.
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Causes of Carryover |
有効利用が難しい少額が残ったため繰り越した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に旅費や物品比の一部として有効に利用する.
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