2014 Fiscal Year Research-status Report
亜社会性ミツボシツチカメムシの家族融合による擬似社会性への進化の可能性
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25440241
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
野間口 眞太郎 佐賀大学, 農学部, 教授 (80253590)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 家族融合 / 擬似社会性 / 亜社会性ツチカメムシ |
Outline of Annual Research Achievements |
高度な真社会性へ至る進化ルートとして,亜社会性ルート仮説が多くの研究から支持されているが,その対立仮説としての側社会性ルート仮説の解析的な研究は進んでいない.本研究では,亜社会性であるミツボシツチカメムシにおいて家族融合という,側社会性ルートの始まりとも思える現象を解析的に調べ,これが次の段階である擬似社会性に移行したと考えていいのか,またその次の段階に移行する可能性があるのか,もし移行しないとしたらその原因は何かについて検討することを目的としている. 野外での家族融合の発生プロセスについては25年度の研究で明らかとなった.26年度は融合した家族における親の保育パフォーマンス(とりわけ給餌頻度)と幼虫への影響を実験室内で調べた.その結果,2匹の雌親の保育行動に,3つの場合のあることが分かり,それらは次のようなものであった.(1)両雌とも単独家族の場合と同様な頻度で寄主植物の種子を給餌した.(2)一方の雌は通常通り給餌を行ったが,他方の給餌頻度が低下した.(3)両雌ともに給餌頻度を低下させた.その結果,両雌が通常と同じくらいの頻度で給餌をした家族では,幼虫達の生存率,成長速度は通常の単独家族の場合と違いはなかったが,他方の雌の給餌頻度が低下した家族や,両雌とも給餌頻度が低下した家族では,幼虫達の生存率や成長速度が低下する傾向が見られた.しかも面白いことに,給餌頻度を低下させた雌親は,餌場に自ら留まり,栄養補給により次の繁殖の準備を早く始める傾向が見られた.しかし,これらは標本数の問題で,統計的な有意性は得られなかった. このように家族融合をした場合,雌親の一方が正常な保育行動を実行しない,いわば「相性の悪い」雌同士の組み合せは家族融合が適応度に機能する可能性を阻害するものと考えられ,互いに保育をよくする「相性の良い」雌同士が近い血縁関係を持つかどうかが興味あるところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この課題の申請時に示した平成25年度計画にある内容をほぼ実行でき,期待した結果を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
26年度の成果によって明らかとなったように,融合した場合の両雌の保育パフォーマンスに関連させて,両雌の血縁関係の程度を調べる実験を開始する.
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Research Products
(6 results)