2015 Fiscal Year Research-status Report
常緑広葉樹林帯における温帯性樹木の遺存分布と成因に関する保全生物地理学的研究
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25440249
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
原 正利 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員 (20250144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 隆 千葉経済大学, 経済学部, 教授 (00269367)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 温帯性樹木 / 遺存分布 / 保全生物地理学 / レフュージア / 植生史 / 花粉分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究計画ついては、年度当初よりメール等で打ち合わせを進めていたが、7月に千葉市で、原正利(千葉県立中央博物館)、内山隆(千葉経済大学)および富田瑞樹(東京情報大学)の3名が集まり、特に調査上の重点地域のひとつである長崎県対馬の調査計画について具体的に検討した。9月初めには、現地の研究者およびハイアマチュアの協力も得て、長崎県対馬・壱岐の現地調査を行った。その結果、対馬では、山頂など高海抜域および渓谷沿いの低海抜域に温帯性落葉樹がまとまって分布する傾向が確認された。冬季の季節風にさらされる高海抜域の低温や強風、霧などの局所的な気候条件や露岩の存在、渓谷における地表攪乱が温帯性落葉広葉樹の遺存に影響していると推定された。壱岐では地形がなだらかで、対馬のような地形条件が存在せず、また、古代からの人為攪乱によって温帯性樹木の分布はほとんど見られなかった。 全国的な分布データベースの作成と分布集中地域の絞り込みについては、その後、九州、中国地方、四国地方を中心に文献等の調査を行い、作成を進めた。これまでのところ九州北部が保全上の重要性が確認されつつある。 一方、花粉分析による植生史復元については、植生と花粉組成との対応を調べるため、対馬の現地調査時に表層花粉を採取し、分析を進めた。また、11月には壱岐でボーリングによる堆積物採取を行った。その分析は、まだ進行中であるが、最終氷期最寒冷期(LGM)以降の3回の寒冷期(1.8万年前、1.5万年前、1.2万年前)の植生変遷として針葉樹林と草原が劇的に変化してきたと推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1共同研究者との連携:研究分担者および連携研究者とはメールを活用し、また現地調査前には集まって打ち合わせを行った。 2分布データベースの作成および分布集中地域の抽出:分布データベースの作成と重要地域の絞り込みは、当初の予定よりやや遅れているが着実に進めている。 3花粉分析:2回の現地調査を行って、表層花粉および堆積物採取を行い、年代測定および分析を進めた。さらに植生史のレビューも行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、作成の遅れている中国・四国地方および近畿・中部地方についてのデータベース作成を進め、全国レベルで、各地域の分布状況の比較および保全上の重要地域の抽出を行う。現地調査行う予定である。 植生史については、花粉分析だけではなく、珪藻分析などによる海水準変動(津波など含む)の解析を視野に入れ、植生史復元を目指す。植生史のレビューについても地域を拡大しさらに進める。 以上の結果に基づき、分布集中地域の環境要因、地史、植生史に関する解析を進め、学会発表等を行う。
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Causes of Carryover |
H26年度に体調上の理由により、分布データベースの作成がやや遅れたが、このために生じた残額がまだ残されている。花粉分析による研究は予定通り進行している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度は本課題の最終年度であり、やや遅れている分布データベースの作成と重要地域の絞り込みを行うため、予定どおり予算を使用する。
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