2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25450003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
山本 将之 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 講師 (10456402)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リグナン / ゴマ / 機能性成分 |
Research Abstract |
1.ゴマリグナン含有量形質の遺伝様式を調査した。まず高リグナン系統のITCFA2002と中程度のセサミン含有量を示し、セサモリンをほとんど含まない系統(#4294)の交雑に由来するF5世代の組み換え自殖系統191個体の種子中のゴマリグナン含量を測定した。その結果、セサモリン含有率の分布は、低いレベルと高いレベルの2つのグループに分かれ、それぞれの個体数の比は1:1に適合したため、#4294ではセサモリン生合成能に関与する単一の遺伝子の機能が損なわれている可能性が高いと結論付けた。セサミンとセサミノール含有率の分布は、いずれも連続的であり含量の高低には複数の量的遺伝子座が関与することが示された。 セサモリン生合成能が1対の対立遺伝子によって決定されているとすれば、ITCFA2002と#4294とのF1個体に結実する種子(F2世代種子)ではセサモリンをほとんど検出できないものが得られると予想される。しかしF2世代の種子からはそのようなものは見出せなかった。セサモリン含有品種と#4294を親とし、雌雄の組み合わせが異なった2種類の交雑種子(F1世代種子)を新たに得て、種子1粒のセサモリン含量を測定したところ、いずれの交雑種子のセサモリン含有レベルも母親と同程度であり、セサモリン生合成能は母親個体の遺伝子型によって決定されている可能性が高いことが示された。 2.ITCFA2002と#4294について種子登熟過程における各リグナンの蓄積ステージを調査した。その結果、セサミンとセサモリンは開花後2週目から3週目にかけて、セサミノールは6週目から7週目にかけて蓄積を開始することが明らかとなった。またITFA2002ではセサミノールが、#4294ではセサモリンがいずれのステージからも検出されなかった。今後は決定した各リグナンの蓄積開始ステージにおける発現遺伝子の網羅的な比較解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リグナン含有量形質の遺伝様式を調査する過程で、セサモリン含有量形質が母親の遺伝子型の影響を受けている可能性が示されるなど興味深い現象が観察されたため、計画を若干変更し、遺伝様式の厳密な調査を優先させ、発現遺伝子の網羅的比較解析は次年度に行うこととした。しかし、各リグナンの種子登熟過程での蓄積ステージは明らかとしたため、網羅的比較解析に用いる、ゴマリグナン生合成遺伝子が最も発現していると考えられる登熟種子のステージの同定は終了している。H26年度は早い時期に網羅的比較解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.網羅的発現解析による原因遺伝子の同定 ゴマリグナン生合成遺伝子が最も発現していると考えられるステージの登熟種子を用いて、発現遺伝子の網羅的比較解析を行い、リグナン生合成系候補遺伝子の同定を行う。同定された候補遺伝子に関しては以下の方法でリグナン生合成遺伝子であるか否かを調査する。(1)候補遺伝子のDNAマーカー化を行い、ITCFA2002と#4294の交雑に由来する組み換え自殖系統を用いて、当該遺伝子がリグナン含有形質と連鎖しているか調査する。(2)候補遺伝子を一過的にもしくは安定的に発現もしくは発現抑制させたゴマ培養細胞を用いて、候補遺伝子の翻訳産物がリグナン生合成に関わるか否かを調査する。(3)候補遺伝子がリグナン生合成に関与しないと推測された場合は、ITCFA2002と#4294の交雑に由来する分離集団より、候補遺伝子の遺伝子型がヘテロ型であるものを選び、その後代から遺伝子領域内で組換えが起こっている個体をスクリーニングし、遺伝子型とリグナン含量との間に相関があるか調査することで、原因遺伝子を同定する。 2.分子遺伝学的手法による原因遺伝子の同定 ゴマでは高密度連鎖地図の報告がなくゲノム情報も限られていたため分子遺伝学的解析が困難であった。しかし、2014年になってゴマの全ゲノム解読の報告がなされたため、分子遺伝学的手法による原因遺伝子の同定が現実的になってきた。そこで、上記の組み換え自殖系統もしくは他の遺伝集団を用い、次世代シークエンサーを用いてゴマリグナン含有形質のマップされた高密度連鎖地図を作成するとともに、次世代シークエンサーを用いたQTL解析法であるQTL-seqを行い、ポジショナルクローニングにより、原因遺伝子の同定を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画を若干変更し、次世代シークエンサーによる発現遺伝子の網羅的比較解析をH26年度に行うこととした。そのため次世代シークエンサーを用いた解析に必要な予算について次年度に繰り越した。 次世代シークエンサーによる発現遺伝子の網羅的比較解析に使用するとともに、新たに計画に加えた、次世代シークエンサーを用いた連鎖地図の作製、QTL-seq解析に用いる。
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