2013 Fiscal Year Research-status Report
性染色体ゲノムの比較によるパパイヤ性決定遺伝子の探索
Project/Area Number |
25450004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
松村 英生 信州大学, ヒト環境科学研究支援センター, 准教授 (40390885)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 性染色体 / ゲノム解析 / DNA多型 / 性決定 |
Research Abstract |
パパイヤの雄と両性の決定に関与する遺伝子を見出すことを目的として、両者の性染色体(Y、Yh染色体)間のゲノム配列の比較を行った。既にパパイヤYh染色体の配列はBACクローンの配列がデータベース登録されているが、それらと合わせて独自に両性株の全ゲノム配列を解読し、既存の配列と共にアッセンブリを行ってより長鎖のYhゲノム配列を構築した。この配列を基に遺伝子予測並びに今までに解析したtranscriptomeデータをマップして、遺伝子領域、発現遺伝子領域を同定した。その結果、545個の予測遺伝子が見出され、うち183個が花芽組織で発現している遺伝子であった。 一方、雄株についても次世代シークエンサーにより全ゲノム配列を解析し、その配列データを上記のYh染色体ゲノム配列にマップし、配列多型等を見出した。その結果、14528箇所の塩基置換、965箇所の挿入/欠失が見出された。また雄株のゲノムDNAを読んだ短鎖配列データがマップできない大きな領域が3箇所見出された。これらのYh-Y染色体間のDNA多型のうち、雄と両性の花芽でのみ特異的に発現している遺伝子上の多型を絞り込んだ。しかしそれらの配列多型は全て非同義置換もしくはORF領域外の多型であった。しかし塩基置換や短い挿入欠失以外にトランスポゾン挿入が両性-雄間で異なっている遺伝子を探索した結果、MADS-boxドメインを持ち、シロイヌナズナのSVP(short vegetative phase)遺伝子と相同性を示す遺伝子で、両性特異的なトランスポゾン挿入が見出された。同遺伝子のcDNAを雄と両性でPCR増幅して比較した結果、両性のcDNA配列から推定される遺伝子産物ではMADS-boxドメインを含まない構造となることが明らかとなった。以上より、このSVP様遺伝子が雄-両性の決定に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の主題である、パパイヤ性染色体とくにYh染色体とY染色体のゲノム配列を解析し、その比較を行ってゲノム多型の探索と多型を示す遺伝子を見出すことに成功した。さらにトランスポゾン挿入の比較まで行うことで、SVP様MADS-box遺伝子が雄-両性間でトランスポゾン挿入に相違があり、転写産物の構造も異なっていることを明らかに出来た。この遺伝子は実は以前の研究でX染色体上にはalleleが無い遺伝子で性決定にも関わっている可能性を示した遺伝子である。この遺伝子が雄-両性間でも多型を示したことはパパイヤ性決定における重要な遺伝子であることを示す新しい知見を得られた。 しかし、この遺伝子のパパイヤ植物体における機能解析(形質転換植物の作製)がまだ上手く進んでいない点を差し引くと、計画以上の進展までは行かないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム比較による解析は、昨年度までは雄、両性の花芽特異的発現遺伝子に絞ったが、それ以外の予測遺伝子からも多型(アミノ酸置換を伴う)を示す遺伝子を探索し、解析を進める。 またそのために、花芽以外の組織における発現遺伝子情報(発現解析データ)を収集し、性間での比較も行う。 H25年度に見出した性決定関与が推測されるSVP様MADS-box遺伝子の機能解明のため、形質転換植物咲く出の試みと共に、突然変異体の作出も試みる。これは研究協力者の沖縄県農業研究センターで主に実施し、別の側面からのアプローチとして遺伝子機能解析を行う。
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