2013 Fiscal Year Research-status Report
イネ無胚乳変異体の解析による多核胚乳形成機構の解明
Project/Area Number |
25450005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
服部 束穂 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (10164865)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 胚乳 / 核 / シンシチウム / 種子 / イネ / 染色体 |
Research Abstract |
人類の主要な栄養源である種子胚乳は、極めて特異な様式で発生する。重複受精によって生じた3nの核相をもつ胚乳原核は、細胞質分裂を伴わずに分裂を続け、多核体を経て胚乳組織が形成される点である。しかし、胚乳初期発生、特に多核胚乳の形成に関しては、組織学的・細胞学的知見がある一方、その制御に関わる遺伝学・分子遺伝学的知見は極めて希薄である。本研究は、胚乳初期発生に異常を持つイネ無胚乳変異体の解析を通して胚乳初期発生の制御機構に関する知見を深化させることを目的とする。 本年度は、解析対象とした新奇無胚乳変異体のうち、endospermless2 (enl2)について重点的に解析を進めた。変異体と野生型コシヒカリの交配から得られたF2実生について、日本晴-コシヒカリ間多型マーカーを用いたマッピングを行った結果、ENL2は、第4染色体長腕、テロメア近くの15kbの領域に存在することが推定された。この領域には2つの発現遺伝子と1つの予測遺伝子が存在したが、その転写領域には変異部位は見つからなかった。 受粉後の子房を固定後PI染色し、共焦点レーザー顕微鏡によりホールマウント観察を行った。enl2が巨大な胚乳核を形成することは計画準備段階で示されていたが、さらに詳細な検討を行った。野生型のシンシチウム胚乳では核が中央細胞の内周に沿って規則正しく並ぶが、enl2 ではより少ない数の巨大核が偏在して観察され、分裂期には、染色体数増加が観察された。したがって、enl2の無胚乳の原因は、核の分裂の異常にあると考えられた。また、反足細胞の核にも異常が観察された。野生型には、小さめの核が散在する多核の反足細胞がみとめられたが、enl2 ではこれらの核が凝集あるいは融合している様子が観察された。このことから、ENL2は、胚乳にとどまらず、他の多核細胞における核分裂においても重要な働きをしていることが推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、解析予定のもう一つの無胚乳変異体enl3に関する解析が遅れた。変異ヘテロ個体から、受精あるいは、胚乳および胚発生の極初期に異常がある系統が分離し、準備段階で観察されていた単純な有胚無胚乳の表現型よりも複雑な表現型、すなわちが分離したためである。夏の異常高温により隠れていた変異が顕在化した可能性も考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
enl3に関しては、より単純な分離をした系統について戻し交配を行い解析を進める必要がある。戻し交配によって得られた後代について次世代シーケンサによる原因遺伝子の特定も視野に入れるが、解析の重点をenl2に置きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
enl3変異体の変異形質が安定しなかったため、原因遺伝子の特定実験が進まなかった。 次世代シーケンサーを用いた原因遺伝子の特定を行うために使用する。
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