2013 Fiscal Year Research-status Report
小麦粉品質の多様性拡大に向けた野生種染色体の微細領域導入による新規育種素材の開発
Project/Area Number |
25450007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
田中 裕之 鳥取大学, 農学部, 准教授 (70283976)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 品質・成分 |
Research Abstract |
小麦粉品質の中で主要因の生地強度には、種子貯蔵タンパク質の種類と量が大きく影響する。コムギとその近縁野生種がもつ種子貯蔵タンパク質遺伝子の多くは、それらの祖先を同じくする第1同祖群染色体に座乗する。そこで、これまでに私たちが収集・育成・維持してきた均一な遺伝的背景の中に様々なコムギの近縁野生種に由来する異種植物の染色体が1対ずつ添加された系統に着目した。 本年度はまず、上記の第1同祖群染色体に属する野生種由来染色体をもつ系統を含めた58系統を実験圃場・温室で生育させ、少量の種子(5 g)から製粉し、SDS沈降量(種子貯蔵タンパク質の種類と量を反映)とタンパク質含量(種子貯蔵タンパク質の量を反映)を測定した。その結果、遺伝的背景である系統の生地強度を1とした時、最強で3.24倍、最弱で0.55倍の生地強度を示す系統を見いだした。 野生種由来染色体を1対もつことで生地強度が向上した14系統と低下した5系統について、小麦粉中の種子貯蔵タンパク質を分離した。その結果、野生種由来染色体にコードされていると考えられる76種類のタンパク質を見いだした。さらに、野生種由来染色体を1対もつことで発現量が低下した93種類のタンパク質を見いだした。 生地強度が向上した系統について、野生種由来の種子貯蔵タンパク質遺伝子の部分配列を決定し、推定上のアミノ酸配列を調査した結果、生地のネットワーク構造の形成に重要で、生地強度を向上させることが報告されているシステイン残基を余分に付加された種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
均一な遺伝的背景の中に様々なコムギの近縁野生種に由来する異種植物の染色体が1対ずつ添加された系統について、当初予定していた第1同祖群染色体をもつ系統だけでなく、その他の同祖群染色体をもつ系統についても、網羅的に小麦粉品質を簡易評価することができた。これにより、予想していなかった同祖群の野生種由来染色体からも新規の種子貯蔵タンパク質を見いだすことができた。 生地強度が向上した系統より得られた野生種由来種子貯蔵タンパク質の構造では、既報と同じシステイン残基の付加が認められたが、その付加された遺伝子上の位置はこれまでに報告例がなく、新規の種子貯蔵タンパク質遺伝子を見いだすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
野生種由来染色体をもつことで生地強度が激変した有望系統については、それに関連する遺伝子のクローニングを継続する。 有望系統がもつ野生種染色体を段階的にコムギ実用品種の染色体と置き換えつつも、有用な種子貯蔵タンパク質を保有した系統の育成を始める。まず、それら野生種由来染色体を識別できるDNAマーカーを開発する。同時に、コムギ異数体系統シリーズを駆使して、野生種由来の不要な染色体片腕を削除した系統を育成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次に購入予定の物品が1,276円より高価なので、その額を次年度へ繰り越すことにしたため。 購入予定の物品について、次年度使用額に翌年度分として請求した助成金を合わせて購入する。
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