2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25450008
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
武田 真 岡山大学, その他部局等, 教授 (40216891)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | オオムギ / 芒 / 形態 / 遺伝子 / 雌しべ |
Research Abstract |
オオムギの芒は穂先に着生した針状の器官で穀粒を包み込む外穎の先端が伸長して形成された器官である。芒は農業上重要な役割である光合成を活発に行い、収量の10%~30%までにも貢献する。 しかし、我が国のように雨の多い気候条件では、芒が長すぎると、雨露が着生し、これに強風が加わると、植物体が倒伏する危険性が高まる。そのため、芒の長さを光合成に悪影響がないように短縮化することが有効であると考えられる。実際、東アジア地域には芒が通常の約半分に短縮した短芒遺伝子lks2を持つ在来品種が多数みられ、倒伏防止上の有用性のため適応性が高く、温存されてきたと見られる。 一方、オオムギの芒は横断面が三角形をしており、その向軸側の2面には鋭い鋸歯がある。鋸歯の長さには品種変異があり、祖先野生種や在来品種では長い鋸歯が多い。これに対し突然変異で鋸歯が痕跡程度に退化した品種は農家から収穫時の粉塵が少なく、人体のかゆみや呼吸器系への悪影響が軽減されるため要望がされてきた。しかし、オオムギでは芒の鋸歯と雌しべの柱頭の毛も多少に連関があるため、極端な芒の滑芒化は雌しべが花粉を受け取る機能を低減し、種子の稔実が低下するため注意が必要である。 本年度は芒の変異体完全無芒Lks1(Length 1)と短芒遺伝子sca (short and crooked)遺伝子について染色体上の位置のマッピングを行った。特にscaについては座乗位置が詳細に特定できた。 さらに、芒の粗滑を決定するraw1遺伝子についてもマッピングを行い、5H染色体の長腕にいちすることを分子マーカーを使って高精度にマッピングした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Lks1無芒遺伝子、sca短芒遺伝子および芒の粗滑を決定するraw1については交配F2集団を用いたマッピングで染色体上の位置を決定できた。そのため、研究の初年度としては順調に進行していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
Lks1無芒遺伝子についてはヨーロッパの研究グループも同じ遺伝子座とみられる遺伝子Lks1.aを研究しており、我々の研究しているLks1.bと重複する可能性があることから、慎重に情報収集しながら研究を進めている。 また、sca短芒遺伝子は岡山大学資源植物科学研究所の大麦系統保存施設で独自に突然変異で誘発した研究材料であるため、海外との競合の可能性は低いと考えられ、現在はこちらの遺伝子に重点を置いて研究を進めている。 一方、芒の粗滑を決定するraw1については高精度で染色体上の位置を絞り込んだ。しかし、オオムギはゲノムの塩基配列解読が完了していないため、遺伝子が位置するとみられる候補領域の塩基配列を決定する必要がある。 これは、オオムギと類縁関係にあるイネ(ゲノム配列決定済み)からの配列情報を基に候補とみられる遺伝子の探索を進めたが、その中には芒の粗滑の原因遺伝子と見られる配列は見つからなかった。今後は、海外のグループがオオムギのゲノム配列情報解読を進めておりその情報が段階的に公開されているので、それを頼りに遺伝子の単離を試みる予定である。
|
-
-
[Book] Advances in Barley Sciences2013
Author(s)
Taketa,S., Yuo, T., Yamashita, Y., Oozeki, M., Haruyama, N., Maejima, H., Kanamori, H., Matsumoto, T., Kakeda, K. and Sato, K.
Total Pages
Chapter 39, p.453-460
Publisher
Zhejiang University Press and Springer Science