2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25450011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
相井 城太郎 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 助教 (10391591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 正之 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (00320911)
大田 竜也 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (30322100)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 異形花型自家不和合性 / ソバ / トランスクリプトーム解析 / 自家和合性突然変異体 / 雄性側S因子 |
Research Abstract |
異形花型自家不和合性は、他の植物でも見られる虫媒による他殖性強化のための巧妙な機構である。ソバにおいては花型と自家不和合性を制御する遺伝子複合体がS座に集約されて機能していると考えられている(S-supergene)が、花粉の自他認識を決定する因子(雌性側S因子と雄性側S因子)を含め、その構成因子は未だ明らかとなっていない。フツウソバの異形花型自家不和合性においては、雌蕊が短く雄蕊の長い短柱花を持つ個体と雌蕊が長く雄蕊の短い長柱花を持つ個体が存在し、異なる型の花を持つ個体間でのみ受精が可能である。短柱花の遺伝子型はS/s、長柱花の遺伝子型はs/sであり、両者間の交配により後代の集団において両花型の存在が1:1に維持されている。本年度は、ソバのS-superegeneを構成する雄性側S因子の同定を目指し、フツウソバと自家和合性突然変異体の短柱花個体と長柱花個体の雄ずいにおける次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析を行った。 野生型短柱花(Ss)と野生型長柱花(ss)雄ずいのトランスクリプトーム解析をすることで、野生型短柱花(Ss)特異的に発現する遺伝子を探索したところ、28の遺伝子断片が短柱花の雄ずいにおいて特異的に発現することが示された。次に、S座候補領域を参照配列として上述した28の遺伝子断片をマッピングしたところ、2つの遺伝子断片が当該領域から転写されていることが確認された。これら2つの遺伝子断片についてRT-PCRによる発現解析を行い、1つの遺伝子断片が雄ずい特異的に発現していることを明らかにした。この遺伝子断片は、S-supergeneを構成する遺伝子候補として期待される。また野生型に加え、自家和合性突然変異体の短柱花(Ss)の雄ずいのde novo RNA-seq解析を行うことで、雄性側S遺伝子の探索を行い3つの候補遺伝子を見出すに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度における研究計画では、1)雄ずいのトランスクリプトーム解析と2)RNA-seq解析より得られたリードのマッピングの2点を合わせて実施することで、雄ずい側S因子候補を絞り込をすることに重点をおいていた。1)の項目については、野生型と自家和合性突然変異体の短柱花と長柱花の雄ずいにおけるトランスクリプトーム解析を実施することで、花型特異的に発現する遺伝子を見出すことができたため当初の目標を達成できたものと考える。2)の項目については、S領域を参照配列としたマッピングより雄性側S遺伝子として期待される2つの遺伝子が見出され、そのうち1つが雄ずい特異的に発現することを確認できた。このことは、雄性側S因子の候補遺伝子として必要条件満たしたものが得られたことを意味し、当初予定以上の成果だと考える。また、研究分担者および連携研究者らとも密に連絡をとり、お互いの研究進展の確認と今後の推進方策について議論することで研究体制の有機的融合を図った。したがって、現在までの研究の達成度は、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ソバの自家不和合性における雄性因子を同定するためには、本年度に得られた候補遺伝子の雄性側S因子としての妥当性を検証する必要がある。そのために、以下の2点の研究を行う。 1)候補遺伝子の機能的役割の解明:候補遺伝子を導入あるいは発現抑制した形質転換体を作製し、形質調査を実施することで雄性側S遺伝子としての妥当性を検証する。また、形質転換体が得られなかった場合の対応として、重イオンビーム照射とEMS処理による遺伝子導入によらない候補遺伝子の機能喪失変異体を獲得する。重イオンビームとEMS処理より得られたM2集団についてはすでに育成中である。 2)発現解析及び進化学的解析による雄性S遺伝子としての検証:RT-PCRにより候補遺伝子のエクソンおよびイントロン構造を明らかにするとともに、発現時期および器官を調査する。候補遺伝子の発現器官が明らかになった後、in situ hybridizationによるRNAレベルでの花器官における発現様式の詳細を空間的に調査する。また、DNAメチル化と自家(不)和合性の関係を調査し、ソバのS-supergeneにおけるエピジェネティックな遺伝子発現制御を検証する。ソバ属内の異形花型自家不和合性を有する他殖性種と異形花型自家不和合性が崩壊した自殖性種において、雄性側S遺伝子の塩基配列及び遺伝子構造を調査し、進化学的観点から異形花型自家不和合性S遺伝子としての妥当性を検証する。 これらの研究結果を統合することで、ソバの自家不和合性の雄性側S因子を同定し、植物の異形花型自家不和合性の機構解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究において次世代シークエンスによる解析は、候補遺伝子の選抜での中核作業である。平成25年度は、次世代シークエンサーによる配列決定に係る費用が申請時額よりも安価に済んだため次年度使用額が生じた。 de novo RNA-seqよるトランスクリプトーム解析については、配列決定数が精度に大きく影響する。平成25年度に生じた次年度使用額は、ソバの自家不和合性の雄性側S遺伝子の絞込の精度を高めるために、平成26年度請求額とあわせてその一部を次世代シークエンスによる配列決定代として使用する。
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