2015 Fiscal Year Research-status Report
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25450011
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
相井 城太郎 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 助教 (10391591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 正之 石川県立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00320911)
大田 竜也 総合研究大学院大学, その他の研究科, 准教授 (30322100)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異形花型自家不和合性 / ソバ / トランスクリプトーム解析 / 自家和合性変異体 / 雄性側S遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、異形花型自家不和合性の分子的実態解明を目指し、自他認識に関わる雄性因子の同定とその機能の解明を行っている。昨年度までに、短柱花個体及び長柱花個体の雄ずいにおけるRNA-seqによる差次的発現解析によって、雄性側S遺伝子の候補を数点見出すに至っている。本年度は、それら候補遺伝子の雄性側S遺伝子としての妥当性について、発現解析、進化学的解析及び変異体解析を実施することによって検証した。 S遺伝子を含む5MbpのDNA配列を参照配列とした候補遺伝子のマッピングを行った結果、3つの候補遺伝子が当該領域に座乗することが明らかとなった。これら3つの候補遺伝子については、48のworld collectionと近縁種を用いたS座との相関解析においても完全な相関が確認された。3つの候補遺伝子の発現を確認したところ、1つの候補遺伝子が雄蕊においてのみ特異的に発現することが明らかとなった。そこで、S座を含む領域が欠失し短柱花が長柱花に変化したキメラ個体を用いて、この候補遺伝子の機能的役割について解析した。キメラ個体の短柱花部分及び長柱花部分より抽出したDNAを鋳型としたPCR解析の結果、前者では増幅産物が確認されたが、後者では増幅産物が得られなかった。これらの結果は、この候補遺伝子がソバの短柱花の表現型決定に重要な役割をもつことを示唆する。 また、野生型及び自家和合性変異体の花器官より得たRNA-seqリードのマッピングによって、ソバの異形花型自家不和合性を制御すると期待されるS-ELF3において新規転写産物を見出した。この新規転写産物は、野生型においては雄ずいでのみ発現するが、雄性(花粉)側に変異を有する自家和合性変異体においては発現していなかった。これらの結果は、S-ELF3の新規転写産物がソバの異形花型自家不和合性における花粉の自他認識決定の因子である可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、①発現解析及び進化学的解析による候補遺伝子の雄性S遺伝子としての検証及び②候補遺伝子の機能的役割の解明に重点をおいていた。①の項目については、詳細な発現解析と進化学的・遺伝学的解析によって、候補遺伝子の絞込に至っている。②の項目については、変異体を用いた解析によって候補遺伝子の機能推定に至っている。また、研究分担者及び研究連携者らとも密に連絡を取り、お互いの研究進展の確認と今後の推進方策について議論することで研究体制の有機的融合を図った。これらのことから、本年度の研究計画は当初予定通りにおおむね進行したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、候補遺伝子の進化学的検証を精緻化し研究成果を取りまとめ、専門雑誌及び育種学会をはじめとする関連学会を通じて研究成果を社会・国民に発信する。
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Causes of Carryover |
課題に関する実験は年度内に終了したが、候補遺伝子の進化学的検証を精緻化し、得られた成果の論文化と関連学会への成果発表をするために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
進化学的解析に必要な試薬の購入と、成果の論文化と関連学会への成果発表費に使用する。
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