2013 Fiscal Year Research-status Report
地球温暖化に起因する米のアミロース含有率低下を抑制する遺伝子の同定とその特性解明
Project/Area Number |
25450014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
鈴木 保宏 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究所・稲研究領域, 上席研究員 (40370548)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 米 / アミロース含有率 / 地球温暖化 / 品質変動 / アミロース含有率低下 |
Research Abstract |
【目的】 地球温暖化によりコメのアミロース含有率は低下し、コシヒカリでは、今世紀中に低アミロース米品種「ミルキクイーン」程度まで低下、粘りが増大すると予想されるため、アミロース含有率低下の防止対策が急務である。担当者らはアミロース含有率が5%程度高まる低アミロース品種「スノーパール」の変異体「ENA」を単離し、この特性がwx遺伝子とは独立な2つの相補的な劣性遺伝子により支配されることを推定している。 【材料及び方法】 ENA/ハバタキのF1株にENAを戻し交配し、BC1F1種子を得た。ENAはスノーパールの低アミロース性Wxアリル(Wx_sp)がホモ型の場合に表現型が識別しやすいと考えられたため、DNAマーカー選抜を用いてWx_spホモ型のBC1F1株のみを選抜した。以降BC1F2~BC1F4世代までENA表現型を選抜し、BC1F4世代におけるENA表現型が確認された個体を得て分子マーカーによる解析に供試した。分子マーカーには、ENAとハバタキの間で多型を示すSSRマーカー、各染色体あたり2~5を選定し利用した。 【結果及び考察】 本年度は、アミロース含有量に関する3つの遺伝子座が関わる中で、効率的に遺伝子座を推定するために、BC1F1世代でWx_spホモ型の17株を選抜してその後代を解析した。茨城県の普通期栽培では、スノーパールのアミロース含有率は5%(濁り胚乳)であり、ENAの10%(半透明胚乳)と簡易判別がある程度可能であった。そこで一次選抜を胚乳の透明度で行い、二次選抜はアミロース含有率を測定することで、ENA表現型の確認を行った。ENA劣性ホモ型と推定されるBC1F3株(合計32株)に共通して存在する染色体領域を、マーカー遺伝子型からENA表現型に関与する領域を推定したところ、第7染色体長腕及び第4染色体中程のみが候補領域として見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ENAとハバタキのBC1F1世代でWx_spホモ型の株を選抜した。その後、ENA劣性ホモ型と推定されるBC1F3株、32株に共通して存在するSSRマーカーの遺伝子型から、ENA表現型に関与する領域を第7染色体長腕及び第4染色体長腕と推定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ENAとハバタキの交配後代、Wx_spホモ型のBC1F2株、BC1F3株を用いて、ENA劣性ホモ型に共通して存在するDNAマーカーを選定する。これにより、ENA表現型に関与する領域を、より狭める。また、ENAとスノーパールの交配後代より、ENA型ホモのF2株やF3株に対してMutMap法を適応し、直接、ENA表現型に関与する2つの遺伝子の同定を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は材料の養成を中心に仕事を進めたため、それほど物品費を使用することがなかった。研究成果の発表を行ったが、年度末の学会であったためこの科研費の経費を使わずに交付金にて参加した。 次年度については、解析用の試料が十分にそろったので、契約職員を雇用し試料の採取、調整と表現型の解析、遺伝子解析等を行う予定である。また、MutMap法による解析、次世代シークエンスを用いた解析に関する外注費を計上する予定である。得られた解析データは取りまとめ、随時発表するようにする。
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