2014 Fiscal Year Research-status Report
子実への転流活性に着目したコムギおよびダイズの旱魃抵抗性の改善
Project/Area Number |
25450017
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柏木 純一 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (60532455)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 乾燥抵抗性 / コムギ / 遺伝資源 / 蒸散 / 転流 |
Outline of Annual Research Achievements |
干ばつ環境下におけるコムギの子実生長と穂温度との関係を明らかにするために,ポット試験を行った.試験は,北海道大学大学院農学研究院,作物学研究室の実験圃場に設置した常設のビニールハウス内で,降雨を遮断することにより作出した乾燥環境で行った.供試材料として,前年度と同様の国内外の多様な10系統のコムギ(6倍体コムギ7系統,4倍体コムギ3系統)を用いた.播種は,2014年5月3日に行った.ポットでのコムギの栽培,および土壌乾燥処理方法,そして穂温および子実生長の調査手順は,前年度と同様である. 乾燥区における子実の生長を1000粒重でみると,その生長には系統間で異なる傾向が認められ,開花後10-15日で生長が停止する系統と,登熟を完了する開花後25日まで生長し続ける系統が存在した.この結果,開花後25日の1000粒重には,最大で2倍程度の系統間差異が認められた. 前年度に土壌乾燥ストレス作出の点で問題となったビニールハウス内の圃場では,強い土壌乾燥ストレスを作出するために,さらに砂土を客土し,また栽植密度を増やしてコムギを栽培した.供試材料として,国内外の多様な12系統のコムギ(このうち10系統は,ポット試験の材料と同一)を用いた.開花期以降は定期的に各系統の穂温を測定して,各系統の水分ストレス程度を評価するとともに,地上部の部位別乾物重を測定して,その生長を系統間で比較した.さらに,開花2週間後および登熟期には,各系統の子実を収穫して,子実生長を評価した.現在,得られたデータを解析中であるが,目視においても明らかなほど,乾燥区におけるコムギの生長は,灌水区と比較して抑制されていた.このことより,2014年度の圃場・栽培改良により,充分に厳しい土壌乾燥ストレスのもとで,各コムギ系統の生長特性を評価できたと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
圃場試験では,砂土の客土および密植の効果により,期待した強度の土壌乾燥ストレスを作出することができた.ただし,前年度より調査の主力をポット試験に変更したため,圃場試験からの大量のサンプル(茎,葉,穂,子実)に加えて,膨大な量のポット試験のサンプルが加わった.これらのサンプルの計測に時間を要しているため,当初の計画よりも達成度が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
ポット試験で認められた土壌乾燥処理における子実生長の系統間差異の原因を明らかにするために,水利用量,水利用効率,穂温(蒸散),子実内の生理活性についてデータの解析を行う.また,実験圃場においては,厳しい土壌乾燥を作出することが可能となった.今年度は,当初の目的である圃場での厳しい旱魃環境におけるコムギ各系統の子実への転流特性について調査して,この特性について有望な系統を探索する.
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Causes of Carryover |
当初圃場を中心に行う予定であったコムギの乾燥抵抗性の評価試験を,ポットに変更しつつ,圃場試験遂行のための改善を行った.この改善が功を奏したため,圃場試験からも解析に値する大量のサンプルを得ることができた.これによりポット試験に加えて,圃場試験からも大量のサンプルを得ることとなった.目下,これらのサンプルを計測中である.これらの解析結果は,子実発達の生理的形質(酵素活性など)調査の判断材料となるため,当初予定していた生理的形質の分析には,現時点では至っていない.このため,これらに関わる試薬・消耗品の購入を行っていないため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ポット試験および圃場試験のサンプルの計測が完了次第,順次これらのサンプルの生理形質の調査を行う予定である.次年度使用額となった予算については,これらの調査開始とともに予定通りに適切に執行する予定である.
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