2015 Fiscal Year Annual Research Report
子実への転流活性に着目したコムギおよびダイズの旱魃抵抗性の改善
Project/Area Number |
25450017
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柏木 純一 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (60532455)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コムギ / 旱魃抵抗性 / 子実成長 / 蒸散 |
Outline of Annual Research Achievements |
コムギの旱魃抵抗性を改善するために,国内外に由来する10系統の多様なコムギを用いて,土壌乾燥環境下における子実発達について調査した結果, 1)登熟期間中の子実の成長には,系統間差が認められた.そのため,最終子実重は系統間で異なった.この系統間差には,倍数性(4倍体,6倍体)や育成地域(シリア,エチオピア,日本)の間で明確な差異は認められなかった. 2)栽培環境の乾燥程度が非常に厳しいシリアでの育成系統であるSW15は,土壌乾燥条件下における子実の生長が最も大きかった.一方,同じシリア育成の系統でも,Cham6,SW10およびSW20は,土壌乾燥条件下での子実の生長が非常に小さかった. 3)土壌乾燥条件下においても,高い子実成長を示したSW15と,低い子実成長であったSW10について,種子の貯蔵糖類を調査した結果,SW10ではスクロース含有率が,SW15よりも高いことが示された.茎葉に蓄積された同化産物の子実への転流の主動力は,茎葉と子実とのショ糖濃度勾配であり,子実でのショ糖濃度が低いことにより活発な転流が生じることが知られている.このことは,デンプン合成酵素により,子実内のショ糖をデンプンとして合成・蓄積することが重要であることを意味している.したがって,土壌乾燥条件下でのSW10は,子実でのデンプン合成が十分に行われていないことが示唆された. 4)サーモグラフィーによる穂温の調査では,SW10は登熟初期の穂温がSW15よりも高いことが示された.これは,SW15は初期の土壌乾燥条件下において,根による吸水や穂の蒸散の低下が小さいことを示唆している.また,この両系統間での穂温の差異は,デンプン合成あるいはデンプン分解酵素活性に影響した可能性があり,これが両系統の子実成長をもたらしたものと推察された.
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