2015 Fiscal Year Research-status Report
ダイズ子実肥大期の窒素同化能力の強化による収量増加のアプローチ
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25450024
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
鄭 紹輝 佐賀大学, 農学部, 教授 (90253517)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダイズ / 子実収量 / 窒素転流 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ダイズの子実肥大期における窒素供給の制御により、ダイズの収量ポテンシャルを最大に掘り下げる目的で行ってきている。これまでは、栄養器官に蓄積された窒素の転流は子実収量に影響を及ぼし、特に葉からの転流窒素は種子全体の13-37%を占めていること、さらに開花期(R1)及び子実肥大開始期(R5)に窒素供給を強化する処理によって、葉における窒素貯蓄機能が優れている品種においてはR1期処理に、窒素貯蓄機能が弱い品種においてはR5期処理で子実収量増加の効果が大きかった。 本年度においては、ダイズ栄養器官に貯蓄された窒素の転流時期を同定し、葉の老化進行との関係を解析した。その結果、子実肥大中期(R6)までは、葉のSPAD値、及び可溶性タンパク含量が増加し続けたが、その後急激に減少し始めた。これと同時期に子実の急激な成長により窒素取り込み量は植物の窒素吸収量を超えたこと、さらに、細胞質内タンパク質を分解処理するオートファジーを制御する遺伝子GmATG8cの発現が急激に増加したことを明らかにした。これらの結果により、ダイズにおいては、子実肥大中期(R6)に急激な子実成長を満たすためには、栄養器官に貯蓄された窒素が子実に転流され、その結果葉の老化が起こり、この過程にはオートファジーがかかわっていると推察された。この結果をもとに、ダイズ子実成長のための窒素不足の時期を推定でき、それに応じた効果的な追肥技術の開発につながるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
葉などの栄養器官に貯蓄された窒素の再利用による子実収量への効果、さらには、子実肥大期において窒素供給強化は、品種の特性によって効果的な時期が異なることなどを明らかにしたことで当初の目的をおおよそ達成できた。昨年度の結果では、栄養器官の窒素転流の時期と子実肥大ステージの関係、さらには窒素転流の分子機構には、オートファジー遺伝子GmATG8cの関与を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
窒素転流の分子機構をさらに解明するために、研究期間を延長し、子実肥大期の窒素栄養状態を制御しながら、オートファジー遺伝子の発現を調査し、窒素転流及び老化のメカニズムを分子レベルで解明していきたい。
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Causes of Carryover |
2016年度に行われる国際作物学会議において成果発表、および窒素転流と老化の関係をさらに分子レベルで追及するために、研究期間を1年間延長する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残予算を平成28年度に繰り越し、物品費:668,337円、旅費:400,000円、人件費:500,000円、その他(論文掲載料他):100,000円を使用する予定である。
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