2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25450027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松浦 朝奈 東海大学, 農学部, 准教授 (30299672)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 塩ストレス / 低酸素ストレス / 雑穀 / 生産性 |
Research Abstract |
世界の塩害地域では,地下水位の上昇およびソーダ質土壌により同時に冠水害を受けることが多く,近年の灌漑面積の増加によって塩害と冠水害を同時に受ける地域が増加している.このような状況において,食料を増加させる方策の一つに,植物の冠水害と塩害に対する複合ストレス耐性作物の導入がある.そこで本研究では,C3植物より水利用効率の高いC4植物である雑穀4種を用いて塩・冠水複合ストレス耐性機構を調べることとした. 材料として,アワ,キビ,ヒエおよびコルネを用いた.800リットルの水槽4基で雑穀4種を栽培し,培養液に通気を行う対照区,通気なしの低酸素区,培養液にNaClを加えて150mMとし,通気を行う塩水区,および培養液にNaClを加えて通気なしの塩水低酸素区の4つを設けて収穫まで栽培した.処理開始時と終了時に,葉面積と器官別乾物重を測定して成長解析を行い,処理後12日目の日中に葉身木部の水ポテンシャルと浸透ポテンシャルを測定した.また,処理終了時には葉身のナトリウム含有率および冠根の通気組織の割合および冠根内のリグニンとスベリンの観察を行った. 収穫時における塩水低酸素区の個体成長速度の絶対値から,供試した雑穀4種の複合ストレス耐性はヒエ>キビ≧サマイ≧コルネの順に強いことが明らかになった.葉身木部の水ポテンシャルと葉身の浸透調整には明らかな種間差異は認められなかった.葉身のNa濃度は全ての雑穀において塩水処理により増加し,塩水区より複合ストレス区で著しく増加した.複合ストレス区の通気組織の割合はヒエ>キビ≧サマイ≧コルネの順で大きかった.冠根のスベリンやリグニンの蓄積には明らかな種間差異はみられなかった.以上のことから,最も強い複合ストレス耐性を示したヒエは,通気組織を発達した根が多かったため,低酸素ストレスに強い耐性を示し,複合ストレスによる成長阻害を緩和できたと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,初年度には,雑穀数種とアワとキビの倍数体系統を用いて,土壌の乾燥,塩,過湿およびそれらを合わせたストレス条件を設定して収穫まで栽培し,雑穀の収量反応とそれを規定する形質および種子の大きさのストレス回避効果を明らかにすることとしていた.塩ストレスと過湿ストレスの複合ストレス耐性については,計画にはなかった冠根内部のスベリンやリグニンの観察を行うことができ,予定以上の結果を得られることができた.乾燥ストレスと塩ストレスについても,おおむねデ-タを収集できているが,根の成長データにばらつきが大きかったため,次年度に採取個体を増やして再実験する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,過湿・塩複合ストレスについては,計画通りに初年度に行った実験について,ストレスの時期を出穂前と出穂後に分けて実施し,どちらの時期の影響が大きいのかを明らかにする.乾燥・塩複合ストレスについては,昨年度の再実験に今年度計画していた処理を加えて実験を行う.以上の結果をまとめて学術論文として公表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画段階では,学会発表のための旅費を15万円計上していたが,半額程度で可能となったため,残額を次年度に使用することとした. 平成26年度には,昨年度の再実験があるため,発表のための旅費を若干減じて,消耗品費に使用することとする.
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Research Products
(4 results)