2015 Fiscal Year Research-status Report
イネ花粉の発達過程における転写制御と高温障害による不稔のメカニズム
Project/Area Number |
25450034
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
川岸 万紀子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門遺伝子利用基盤研究領域, 上級研究員 (50355707)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 均 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門遺伝子利用基盤研究領域, ユニット長 (30355565)
大島 正弘 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門遺伝子利用基盤研究領域, 領域長 (20355572)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子発現制御 / イネ / 花粉 / 雄性不稔 / 高温障害 / ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イネの花粉形成過程の分子制御システムと高温条件下での不稔の発生メカニズムを明らかにすることを目的としている。これまでの研究から、高温ストレスによるタペートの機能不全が鍵となって不稔が誘発されると考えられる。そこで本研究では、タペートで働く転写因子に着目して、花粉形成過程における機能や制御様式を明らかにすることを目指す。 イネより単離したMYB様転写因子遺伝子についての解析を進めた。CRISPR/Cas9システムを用いて、MYB様転写因子のコード領域のうち、MYB転写因子に共通のドメインとMYB80に特有の領域とに変異の導入を試みた。機能欠損の程度が様々に異なると予想される変異が導入された多数の変異体が得られたので、現在、それらの変異が花粉形成に与える影響を調べている。また、これまでに同定した高温により発現が低下する遺伝子群のうちで、MYB転写因子結合モチーフをもつと考えられるものについて、上流領域の単離と解析を進めているところである。 また、高温が花粉に与える影響を明らかにする目的で、花粉の発芽特性の解析を進めている。イネ花粉の培地上での発芽試験の条件を改善し、安定的な発芽効率が認められるようになった。高温処理後の花粉は、無処理の花粉に比較して、培地上に飛散する花粉数が少なく発芽効率も低いことが確かめられた。これは、高温処理条件下のイネの穎花で観察されていた、開花期に柱頭上に付着する花粉粒数が少なく発芽率も悪いという事象に矛盾しない結果である。高温処理後の花粉粒の飛散が少ないという点に関しては、葯の裂開が正常に起こっているかどうか、花粉粒の性質が変化して飛散しづらくなっているのかどうか、について調べていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イネより単離したMYB様転写因子遺伝子について、多様な変異をもつ機能欠損型の変異体が複数得られるなど、おおむね順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
イネより単離したMYB様転写因子遺伝子について、すでに得られている多様な変異をもつ機能欠損型変異体を利用して、この遺伝子が花粉形成過程において果たす役割を解析する。また、この遺伝子の発現特性を常温、高温条件で比較解析するとともに、高温応答性遺伝子の発現制御の可能性を検討し、上記の変異体も駆使しながら下流の標的遺伝子の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度の人事異動により、研究代表者と研究分担者が同じ研究領域の所属となり、研究に必要な試薬類、消耗品等をいっそう効率的に使用することができたため経費を節減できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分子生物学実験や形質転換植物の作出や栽培などに必要な試薬類や消耗品などにかかる経費に充てるとともに、研究補助員の雇用経費として支出する。
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