2014 Fiscal Year Research-status Report
リンゴの完全ホモ個体の作出による育種・遺伝解析の効率化モデルの構築
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25450038
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小森 貞男 岩手大学, 農学部, 准教授 (00333758)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リンゴ / 葯培養 / 完全ホモ個体 / 倍加半数体 / 遺伝解析 / 育種素材 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンゴ品種 千秋、世界一、祝、Starking Deliciousの葯培養を約10万個実施した。これまでの葯培養によって馴化個体が得られた千秋、世界一、Starking Deliciousを用いて、シュート形成に影響する要因を統計的に解析した、その結果、胚様体の発根がシュート形成と最も相関が高く、胚様体からの発根を促進する条件を整えることが有効であることが判明した。その他の要因では、胚様体が一定以上の大きさになるとシュート形成を有意に阻害することから、胚様体形成後速やかに低温処理、発根誘導を行うことが重要と判断された。葯置床前の低温処理期間、胚様体形成時期は品種間差が大きいことが判明した。また、馴化した倍加半数体を獲得するためには胚様体形成、シュート形成、シュート増殖・馴化の三つの段階が律速要因となっていることが判明した。これらの要因は異なる遺伝子で制御されており、これらの要因をすべて満たす品種の選抜が重要である。 農業上重要な形質の解析に関して、リンゴの最主要品種であるふじと千秋由来の倍加半数体との交雑を行い、実生を獲得した。現在育苗中で、今後福島県果樹研究所、農研機構果樹研究所とともに遺伝解析、ゲノム解析を行う。 倍加半数体相互の交雑によるF1実生作成のための予備的試験として、遺伝的背景がそろう無配偶生殖性を示すM.hupehensisについて、多数の無配偶種子を獲得した。獲得した種子の一部について、放射線育種場でガンマ線の照射を実施した。今後は対照の無照射個体とともに播種、育苗して、開花までの年限の変化や形態的生理的変異の検出を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は倍加半数体を獲得しやすい4品種に限定して、合計約10万個の葯を培養した。その結果、千秋、世界一、Starking Delicious由来の個体を獲得した。葯培養において個体獲得に影響を及ぼす要因の解析を行い胚様体の発根がシュート形成に最も重要であることを明らかにし、胚様体形成後速やかに低温処理、発根誘導を行うことが個体再生のポイントとなることを明らかにした。これらの研究から、倍加半数体獲得のためには、胚様態形成、シュート形成、増殖・馴化の三つの過程が律速要因となっていることを明らかにし、これらの要因が独立の遺伝的因子で制御されていることを示した。 農業上重要な諸形質と遺伝子マーカーとの対応に関しては、稔性を有する倍加半数体とPrima の交配によって作出した実生の遺伝解析を農研機構果樹研究所、福島県果樹研究所と共同して解析を実施しており、成果を国際学会で報告する。 倍加半数体相互の交雑によるF1実生作成のための予備的試験として、遺伝的背景がそろう無配偶生殖性を示すM.hupehensisについては、無受粉・袋かけ処理により多数の無配偶種子を獲得し、獲得した種子の一部について、放射線育種場でガンマ線の照射を実施した。今後は播種、育苗して変異の検出を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
倍加半数体の新たな利用方法として、倍加半数体の葯培養系および小胞子培養系を立ち上げ、小胞子の段階で変異導入を図ることで、遺伝的背景が斉一な1細胞に由来の理想的な実験系が確立できることが判明した。 稔性のある倍加半数体と主要品種の交配によって獲得した実生群の解析は農業上重要な知見となることが予想されるので、リンゴの最主要品種であるふじと倍加半数体の交配による実生を獲得する必要がある。 今後、上記の育種技術、遺伝解析素材の開発の両面で倍加半数体を有効に活用する必要がある。
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Research Products
(4 results)