2014 Fiscal Year Research-status Report
果実の糖蓄積および糖酸バランス調節における糖新生・PEPCKの機能解明
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25450039
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松倉 千昭 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60361309)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 糖蓄積制御 / 果実 / トマト / 糖新生 / 実生生長 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) PEPCK発現抑制形質転換体における代謝動態解析および初期生長への影響評価:PEPCK酵素活性の測定を行い、供試系統においてPEPCK酵素活性が有意に下がっていることを確認した。また、果実におけるアミノ酸含量を解析した結果、PEPCKの発現抑制による顕著な影響は見られなかった。このことから、同遺伝子の発現抑制による一次代謝への影響は、主として糖、有機酸に限定されることが明らかになった。 (2) PEPCK発現抑制形質転換体における発芽種子生長への影響評価:前年度、PEPCKの発現抑制により発芽実生の生長が抑制されることを報告した。今年度、これらの影響をより詳細に解析した結果、生長抑制は地上部よりも根により顕著に見られることが明らかとなった。 (3) PEPCK過剰発現形質転換体の作出:35Sプロモーターおよび果実成熟期特異的E8プロモーターを用い、両プロモーター駆動型において1コピー、ホモ接合型のT2系統を各々複数形等獲得した。35Sプロモーター駆動型形質転換系統の果実糖含量を測定した結果、赤熟期果実において、可溶性糖含量が増加することが明らかとなった。これは、RNAi法により発現を抑制した場合と逆の結果であり、PEPCKが赤熟期果実において糖含量の調節に関与しているという、我々の仮説を裏付けるものである。 他方、有機酸を測定した結果、過剰発現形質転換体と野生型の間で顕著な差は見られなかった。今後、E8プロモーター駆動型過剰発現形質転換体と併せて、糖、有機酸以外の一次代謝産物の測定を行うと共に、植物体生長、果実収量への影響を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書において平成26年度はPEPCK過剰発現形質転換体の作出とエリートラインの獲得、それら系統における果実成分(糖、有機酸)の分析を計画していた。研究実績概要で述べた通り、研究は概ね予定通り進捗しており、PEPCK過剰発現形質転換体において、果実糖含量が上昇することを確認できた。同遺伝子発現抑制形質転換体の結果と考え併せると、トマトの果実糖含量制御において、糖新生が一定の役割を果たしている可能性が高いと考えられる。 なお、新規遺伝子・PEPCK2については、H25年度に野生型植物体における発現解析を行った結果、発現が殆ど見られず、偽遺伝子と考えられたため、以後の解析は行っていない。 また、H.27年に実施予定の液果型果実種におけるPEPCKの活性評価と糖酸比への影響評価について、リンゴを用いて予備的な解析を行ったが、トマトで行っている酵素活性法では有効なデータは得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、前年度に作出したPEPCK過剰発現形質転換体の表現形質(生育、収量、バイオマス)ならびに実生生長の影響を評価する予定である。 また、液果型果実種におけるPEPCKの活性評価と糖酸比への影響評価については、H.26年度にリンゴを用いて予備的解析を行った結果、有効なデータが得られなかった。材料確保が秋期に限定されることを考慮し、代替案として、糖度の異なるいくつかのトマト品種を供試し、果実成熟期におけるPEPCKの酵素活性評価を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度は概ね当初計画通りに経費執行を行った。平成25年度の繰り越し分をそのまま持ち越したため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に論文投稿を2本予定しており、繰り越し分はそれらの投稿料に充てる計画である。
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