2013 Fiscal Year Research-status Report
低温プラズマプロセスの培養液の殺菌や植物の生長促進など農業分野への適用研究
Project/Area Number |
25450043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
安井 晋示 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30371561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄子 和博 一般財団法人電力中央研究所, その他部局等, その他 (10371527)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 液中プラズマ / 殺菌 / 培養液 / 植物工場 |
Research Abstract |
液中で安定してプラズマを生成できる電極を開発し,ホウレンソウなどの水耕栽培において,多大な被害を及ぼす萎凋病の原因菌であるフザリウムを対象に,培養液へのプラズマ照射による殺菌効果を検証した。プラズマガスの種類,ガスの流量,溶媒,吹付方法を変化させてプラズマ照射実験を行い,フザリウム菌胞子の生菌数の変化を調べた。 溶媒として滅菌蒸留水を用いた場合には,O2, Air, He, Ar, N2の全てのガス条件でフザリウム菌胞子を死滅でき,特に,O2, Airの条件では5分以内で死滅した。この理由は,特に,酸素に起因するオゾンの生成が殺菌に大きく寄与した。一方,オゾンを全く生成しないHe, Arガスの条件でも,それぞれ10分,20分以内でフザリウム菌胞子を死滅できることを確認した。次に,溶媒として培養液を用いた場合には,AirとN2の条件ではフザリウム菌胞子を完全に死滅させることができなかった。この理由は,N2に起因するラジカルが,培養液中においては,フザリウム菌胞子の殺菌に寄与するラジカルの生成を阻害していると考えられる。しかしながら,培養液においても,オゾンを生成しないHe, Arの不活性ガスを用いた液中プラズマにおいて,20分の照射でフザリウム菌胞子を完全に死滅させることができた。したがって,植物の生育を阻害するオゾンガスを発生させることなく,液中プラズマによって培養液の殺菌が行える新たな知見を見出した。 また,プラズマの照射方法についても,プラズマによる表面処理方法として通常用いられている吹き出し方式などと比較して,我々の研究室で開発した液中プラズマ方式の方が殺菌効果が高いことを検証した。そして,培養液の連続照射実験や生育促進確認実験に向けて,プラズマ発生用のパルス電源や,連続照射用電極の設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)プラズマ照射した水耕栽培培養液における殺菌効果の評価 従来,水耕栽培用培養液の殺菌や野菜苗の生長促進については、オゾン水や各種光照射による研究が進められてきた。しかしながら,オゾンは,野菜などの植物の生長を阻害し,クロロシスなどの病気の原因にもなる。本研究において,オゾンを生成しない不活性ガスによる液中プラズマにより,培養液中のフザリウム菌胞子を殺菌できることを明らかにし,水耕栽培培養液の殺菌技術への適用を見出すことができ,初期の目標を達成した。この殺菌効果は,プラズマ生体反応などに寄与すると考えられているスーパーオキサイドやヒドロキシラジカルが影響していると思われるが,培養液のpHの変化などの影響を定量的に評価するまでには至っていないので,今後の検討課題である。 2)プラズマ照射装置の設計と試作 植物工場で容易に液中プラズマを発生するための,持ち運びが容易で,安価かつ小型なパルス電源の設計と試作を行った。当初想定したパルス電圧とパルス電流では,不活性ガスを用いた場合,プラズマの電流が不足することが確認された。そこで,パルスのデューティー比を見直し,IGBTの制御基盤などの設計仕様の見直しを行った。検討した設計仕様を元に,26年度には新たなパルス電源の試作を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、引き続き2)植物工場における水耕栽培用の培養液の殺菌効果の評価を進めると共に、3)プラズマ処理した高機能水による野菜苗の生育促進効果の確認を行う。 1)プラズマ照射した水耕栽培培養液における殺菌効果の評価 オゾンを生成しない不活性ガスでの液中プラズマによりフザリウム菌胞子の殺菌効果を検証したが,プラズマ照射により,培養液のpH、EC、温度が若干変化する。フザリウム菌胞子の殺菌に対するこれらの影響度を定量的に確認し,液中プラズマにより生成されるヒドロキシラジカルなどのフリーラジカルの効果を抽出することで,フザリウム菌胞子の殺菌メカニズム解明を進める。また,プラズマ処理中に培養液を経時的にサンプリングし、ICP分析およびイオンクロマト分析により培養液成分の変化の有無を確認して,処理後の培養液中の無機成分の変化と植物の生育に与える影響を評価する。 2)プラズマ処理した高機能水による野菜苗の生育促進効果の確認 野菜苗の生育促進効果の検証実験を行うために,持ち運びが容易で,小型で安価な液中プラズマ発生用のパルス電源を試作する。25年度に調査した高電圧パルスの電圧値,電流値,そしてデューティー比などの設計指針を元に,IGBTの制御や昇圧トランスを組み込んだパルス電源を試作する。そして,試作したパルス電源を用いて,葉菜類の主品目であるレタス、コマツナおよび果菜類の主品目であるトマト、キュウリを対象にして、育苗期間中にプラズマ処理した機能水を葉面散布および底面吸水を行わせた後、野菜苗をサンプリングし、既報(庄子ら、電力中央研究所研究報告V10032、V10043)に従って生育とポリフェノールなどの機能性成分含量に与える影響の有無を評価する。この際、プラズマ処理した機能水の効果の寿命を評価し、必要であれば、効果を持続させるためのラジカルトラップ剤などの添加を検討する。
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