2014 Fiscal Year Research-status Report
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25450056
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
小野 義隆 茨城大学, 教育学部, 名誉教授 (90134163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡根 泉 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (60260171)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ブドウ / サビキン / さび病 / 分子系統 / 地理的分布 / 生活環 / 宿主特異性 / 種分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.熱帯アジアに分布するブドウさび病菌については、これまでのタイ、マレーシア、インドネシア、パプアニューギニアおよびオーストラリアからの標本に加え、タイでの広域調査と多くの収集標本をもとに形態および分子系統を精査した。その結果、熱帯アジアに分布するブドウさび病菌は温帯アジアに分布する2種のブドウさび病菌とは異なる新種であることを確認した。 2.アジア全域でのブドウさび病菌の生活環研究を行う過程で、中間宿主であると推定できるアワブキ属植物5種に、既知の5種のPhakopsora属サビキンとは形態的特徴の異なる3種のAecidium型生育相を持つサビキンがあることを確認した。これらはさび胞子形態の特徴から、いずれもPhakopsora属サビキンのさび胞子世代であると推定した。接種試験の結果、このうちの一種はアワブキ属植物上に同種寄生性生活環をもつ新種のPhakopsora属サビキンであることを確認した。 3.アフリカに分布するCissus属植物上に見出した新種はKuehneola属サビキンであることが判明し、またCayratia属植物に寄生する別のKuehneola属サビキンがあること新たに明らかにした。 4.北アメリカ南部から南アメリカ北部に分布するブドウさび病菌が2種であること確認し、ブドウ属ブドウ亜属植物に寄生するサビキン種はメキシコ湾岸からフロリダ半島およびメキシコ・ベネズエラ。コロンビアに分布し、ブドウ属マスカディニア亜属植物に寄生するサビキン種はメキシコ湾岸から北部、ノースカロライナ州までに分布することを明らかにした。 5.接種試験の結果、マスカディニア亜属植物に寄生するサビキン種はブドウ亜属植物にも感染し胞子形成することを確認した。いっぽう、ブドウ亜属植物に寄生するサビキン種がマスカディニア亜属植物に感染することは確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
地理的分布調査、採集標本に基づく形態分析、接種試験による宿主特異性と生活環研究は計画通り進行している。2014年度に実施する計画であった分子系統解析はアジアに分布するさび病菌については完了した。いっぽう、アメリカに分布するブドウさび病菌の分子系統解析については、対象とする遺伝子領域を再検討する必要が生じたために、2015年度に本格実施することとした。また、接種試験によって得られたアメリカに分布する2種のさび病菌のうち1種の宿主特異性の研究結果がこれまでの野外観察や多数の収集された標本の解析で得られた結果とは異なることが明らかになった。そのため、これら2種の宿主特異性についてさらに詳細に研究を行った上で、系統解析に供試するサンプルの選択を見直すことが必要になった。 異種寄生性生活環研究に関しては、タイでの野外観察と標本解析によって中間宿主の推定はできたが、接種試験に供試するアワブキ属植物が入手困難なため接種試験が実施できなかった。北アメリカに分布する2種については、野外観察の結果とこれまでの北米南部での植物相研究成果から、異種寄生生活環での中間宿主の推定が困難な状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.日本に分布する2種のブドウさび病菌の栽培ブドウでの同時重複感染の実態と、2種のさび病菌ブドウ栽培地帯での分布特性を明らかにする。 2.北アメリカ南部に分布する2種のブドウさび病菌の宿主特異性をさらに接種試験によって明らかにする。 3.北アメリカ南部に分布する2種のブドウさび病菌の系統的関係およびブドウ属とアワブキ属植物に寄生するサビキン系統全体の中での位置を明らかにする。 4.これまでの野外調査から、北アメリカ南部に分布する2種のサビキンが冬期にもブドウ生葉上で夏胞子世代の繰り返しで通年発生していることが明らかになったが、冬胞子も確実に形成することから、異種寄生性の可能性は否定できない。そのために、再度野外観察を行い異種寄生性生活環の解明に取り組む。
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Causes of Carryover |
2014年度計画していた分子系統解析が、解析途上で再検討を必要とすることになったため、作業の一部を2015年度に移行することが必要になった。そのため、2015年度に実施する分子系統解析に必要な経費を留保することが必要でありかつ適当と判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカに分布するブドウさび病菌の系統解析に関わる試薬およびシークエンス委託料として使用する。
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[Presentation] Phylogeny of Pseudoclathrosphaerina, an aero-aquatic fungus, and its two new species isolated from Thailand and Japan.2014
Author(s)
Yamaguchi K, Chuaseeharonnachai C, Tabuchi Y, Shimamura K, Sri-Indrasutdhi V, Boonyuen N, Okane I, Suzuki K, Ando K, Nakagiri A.
Organizer
10th International Mycological Congress (Bangkok)
Place of Presentation
Queen Sirikit National Convention Center
Year and Date
2014-08-03 – 2014-08-08
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