2014 Fiscal Year Research-status Report
イネ病害抵抗性におけるサリチル酸の合成・蓄積を制御する分子機構の解明
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25450067
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
高橋 章 独立行政法人農業生物資源研究所, 耐病性作物研究開発ユニット, 主任研究員 (20414914)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イネ / サリチル酸 / 病害抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネのサリチル酸(SA)合成に関与する遺伝子を同定するため、フェニルプロパノイド合成酵素遺伝子の発現を制御するMYB転写因子の一過的過剰発現体を用いて、マイクロアレイ解析を行った。さらに、これまでに同定したospti1a変異体でSAの過剰な蓄積に合わせて強く誘導される、約2,300個の遺伝子群と発現パターンを比較し絞込を進めた。 イネにおけるSAの合成は、イソコリスミ酸ではなくフェニルアラニンを経由する経路が主要な役割を果たしていると推測される。しかしながら、イネにおいてはフェニルアラニンを経由するSA合成経路において、PAL酵素の下流で働くBA2H酵素はまだ同定されていない。阻害剤を用いた解析から、イネのBA2Hはp450であることが示唆されていることから、絞り込んだ遺伝子のうちp450遺伝子に着目し、発現パターンを詳細に解析することにより、イネBA2Hの候補として3つの遺伝子を見出した。 シロイヌナズナのsid2変異体に、イネのOsICS遺伝子を導入し、細菌病に対する抵抗性を調べたところ、OsICSによるsid2変異体の相補は見られなかった。OsICSではICS酵素として必要なドメインは完全に保存されている。そこで、OsICSがsid2変異体を相補しない理由を調べるため、ICS活性を有するシロイヌナズナのAtICS1と、活性を有さないOsICSでキメラタンパク質を作成し、機能解析を行うための準備を行った。また、イネ変異体系統群から複数のOsICSにアミノ酸置換が起こった変異系統が見出されたことから、植物体の育成を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イネにおけるSAの生合成に関与する遺伝子を絞り込むため、MYB転写因子の一過的過剰発現体を利用したマイクロアレイ解析を完了し、PAL酵素の下流でSA合成に関与するBA2H酵素の候補として、3つの遺伝子の同定に成功した。これらの遺伝子がイネにおいてSA合成に関与しているか確認する予定である。 さらに、OsICSは機能ドメインが保存されているにも関わらず、ICS活性を有していない理由を明らかにするため、キメラタンパク質を作成し、形質転換体の作成を進めた。また、イネ変異体系統群からOsICSにアミノ酸置換が起こった変異系統を複数見出した。これらの形質転換体及び変異系統の解析を進めることにより、イネにおいてICS経路が効率よく利用されない理由について、一定の知見が得られることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
イネのBA2H候補として同定したp450遺伝子について、イネの病害抵抗性に関与するかについて解析するため、過剰発現体の作成ならびにノックアウト変異体の探索を始める。 シグナルペプチドを入れ替えたキメラICSタンパク質を、イネ及びシロイヌナズナに導入し機能解析を行う。さらに、イネ変異体系統群から複数のOsICSにアミノ酸置換が起こった変異系統が見出されたことから、これらのイネの機能解析を行うとともに、さらにICSのノックアウト変異体の探索を進め、Loss-of-functionについて解析を行う。
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Causes of Carryover |
本年度、形質転換体の作成・維持のため研究補助員1~2名の雇用を予定していたが、形質転換体の作成開始が遅れたため、補助員は1名のみの雇用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
形質転換体の作成・機能解析のため引き続き研究補助員を1名雇用し、SA合成に関与する酵素遺伝子について形質転換体の作成を進め、得られた形質転換体を用いて、病理学的、生化学的、生理学的な解析を行う。また、ICSキメラ遺伝子導入イネ及びシロイヌナズナの機能解析とともに、OsICS遺伝子のノックアウト変異体の探索を継続する。
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