2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25450078
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
河合 成直 岩手大学, 農学部, 教授 (80161264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
我妻 忠雄 山形大学, 農学部, 客員教授 (70007079)
服部 浩之 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (40132857)
青山 正和 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (60150950)
頼 泰樹 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30503099)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Na型塩類土壌 / シオチガヤ / 鉄吸収 / 耐性植物 / 中国東北部 / イネ科牧草 / ムギネ酸 / 放射性鉄 |
Research Abstract |
土壌学的研究において土壌元素組成の検討を行った。中国現地で採取した土壌中の交換態陽イオン、水溶性陽イオンの分析を行い、pHが9を超える土壌においてNaが大量に集積し、Kが非常に少ないことを確認した。また、NaとKの選択性の検討については現地土壌を用いて栽培実験を行い検討した結果、シオチガヤは他の牧草と比べNa含量非常に低く、K含量が高い特性を持つことが示された。土壌中の腐植組成の解析においては炭素が予想外に少なく、水により溶出される鉄やアルミニウムの多くは腐植と結合していないことが示唆された。 植物生理学的研究においては、鉄とムギネ酸の挙動について実験を行い、シオチガヤの炭酸Na塩耐性機構の一つであるFe吸収機構について放射性鉄59Feを用いて検討した。シオチガヤにおいて、pH上昇によりムギネ酸を介した59Feの吸収・移行量は低下したが、高pH条件下でもMAsによる59Feの吸収・移行の有意な促進が見られた。シオチガヤのMAsを介した59Feの吸収・移行は40 mM 炭酸Naで促進され、シオチガヤはMAsを介したFe吸収・移行を炭酸イオン存在下で維持・促進する機構を持つことが示された。しかし、シオチガヤも80 mM 炭酸Na区は対照区と有意差がなかった。本研究でシオチガヤの高い不良環境耐性にMAsを介したFeの吸収・移行を維持・促進する能力が関与することが明らかとなった。 植物育種学的研究において、2mMアジ化ナトリウム溶液、及び、2%EMSで25℃6時間の突然変異処理を行った。虎の尾草の種子は吉林省大安市郊外で採取した。突然変異処理後の種子は水洗後、播種し、M1種子を収穫した。隔離温室内でM1世代の形態変異のスクリーニングを行った。その結果、無ぼう化個体は出現せず、アルビノ個体も出現しなかった。虎の尾草は4倍体以上の染色体構成を持つと推測され、突然変異処理による新規形質をもつ系統の作出は困難であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
土壌化学的研究においては、1.土壌の元素組成の検討と2.土壌中の腐植組成の解析の2つを行った。1.については、中国東北部吉林省の大安市、白城市を訪問し、土壌を採取し、長春の吉林農業大学の趙蘭波教授より2種類の土壌を得て、合わせて4種類の土壌の化学的分析を行うことができ、有意義な知見を得た。ほぼ予定通りの達成度を示した。2.については、土壌中の腐植の分析を行い、土壌から溶け出る腐植がその色から予想されるほどには多くないとの結果が出ており興味深いが、中国現地において詳細に分類して採取した試料の郵送荷物が、日本への輸入の過程で紛失するという事故があったために、詳細な検討ができなかった。この点の検討は来年度行うこととなり、やや予定が遅れることとなった。 植物生理学的実験においては1.NaとKの選択性の検討については現地土壌を用いて人工土壌を作り検討した結果、明瞭な結果を得た。2.ムギネ酸の分泌量測定、3.アルミニウム耐性の評価については、水耕栽培した植物を用いて実験を行い明瞭な結果を得た。また、27年度に予定していた鉄とムギネ酸の挙動についての実験を前倒しで今年度に検討した結果、シオチガヤの炭酸塩に対する適応が示され、新規な知見が得られた。何れも、予定した以上の達成度が得られた。 植物育種学的研究については、実験を試みたものの予想した結果が得られず、本実験で品種改良を試みた虎の尾草の特性として、適用した方法による品種改良が困難であるとの結論となり、来年度以降、この研究については打ち切らざるを得ない状況である。この点は目標を達成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
土壌化学的研究においては、昨年に続き土壌中の腐植、土壌有機物の解析を行う。今年度、もう一度、中国現地において土壌試料を採取し、土壌中の腐植酸を化学性に基づき分画し、含まれる物質の金属イオンとの結合などを検討する。 植物生理学的研究においては、現地土壌で亜鉛が多量に施用されている現状に基づき、炭酸ナトリウム耐性に対する亜鉛の効果の検証を行う。また、亜鉛の吸収に対するムギネ酸効果を検討する。この時、27年度に予定されていた水耕栽培した植物根に対する放射性亜鉛とムギネ酸の投与実験を行う。さらに、昨年度行われたイネ科植物のアルカリ条件下でのアルミニウム耐性に関する研究は、国際的に見ても十分に研究されているとはいえず、さらに、研究を継続する必要があると考えられる。特に、アルカリ条件下におけるアルミニウム吸収に対するムギネ酸の効果については、全く知見がなく、これをさらに検討することが重要であると考えられ、これについてさらに検討する。さらに、アルカリ条件下での植物のムギネ酸分泌能に対するアルミニウムの毒性についてもこれまで報告がなく、これについても、水耕栽培した植物を用いて検討を行う。ムギネ酸による鉄吸収と土壌有機物の相互作用については、上述の腐植と有機物を扱う分野がやや遅れているが、それとは別に土壌から腐植物質と思われる物質を抽出して、鉄吸収実験を行う予定である。 植物育種学的研究については、昨年の検討の結果、当初のアイデアでは、目標達成が難しいと考えられたので、この研究は打ち切ることとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中国から送付した土壌試料が郵送過程で紛失し、実験に必要な試料が十分に得られなくなり実験が予定より少なくなり、試薬代金に余剰が出た。 来年度、再び中国へ行き、土壌試料を入手し、予定してた実験を行う。そのための試薬代に充てる。 今年度も繰越額と平成26年度請求額を合わせた金額から1名が中国へ行く旅費を支出する。本年も各分担者及び代表者は土壌や植物の分析を行い、その試薬、実験器具代を消耗品費として支出する。
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