2014 Fiscal Year Research-status Report
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25450078
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
河合 成直 岩手大学, 農学部, 教授 (80161264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
我妻 忠雄 山形大学, 農学部, その他 (70007079)
服部 浩之 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (40132857)
青山 正和 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (60150950)
頼 泰樹 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30503099)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソーダ質条件 / 炭酸イオン / 鉄吸収 / ムギネ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
水耕栽培においてソーダ質条件(pH10、炭酸緩衝液)、アルカリ条件(pH10)、対照区(pH 6.5)の鉄欠培地を作成し、植物生育とムギネ酸の分泌をオオムギと耐性植物において比較する実験を行った。両植物いずれも、培地のpH上昇により葉が緑化することが分かった。また、耐性植物はソーダ質条件においてより葉色が濃くなった。植物体の生育は両植物の地上部において、いずれもアルカリ条件下で最も生育が良かった。オオムギはソーダ質条件下では対照区と同程度に生育したが、耐性植物ではソーダ質条件下のほうが対照区より生育が良かった。 ムギネ酸分泌量は両植物ともアルカリ条件下で最も高かった。オオムギではソーダ質条件下でムギネ酸の分泌は大きく抑制されたが、耐性植物では対照区と同程度、または、促進された。これらのことは、アルカリ条件が鉄欠乏を促進し、ムギネ酸分泌を促進するが、炭酸イオンが両植物のムギネ酸分泌を抑制することを示していた。また、耐性植物のムギネ酸分泌系のほうがオオムギより炭酸イオンに抵抗性があると示唆された。 耐性植物の分泌ムギネ酸を薄層クロマトロマトグラフィを用いて同定したところ、ムギネ酸と3-ヒドロキシムギネ酸であると示唆された。 また、放射性亜鉛65Znを水耕植物の根圏よりムギネ酸とともに投与する実験を行ったところ、ムギネ酸はpH10の根圏において亜鉛の吸収を促進することが分かった。 ムギネ酸の鉄溶解活性能に対する溶液中の陰イオンの影響を検討する実験を行った。その結果、ムギネ酸の鉄溶解活性は炭酸イオンにより80%程度抑制されることが分かった。それに対し、塩化物イオンと硫酸イオンは全く影響を与えなかった。このことは、ソーダ質条件下では、ムギネ酸を介した鉄の吸収を大きく妨げ得ることを示しており、炭酸イオン濃度が高いソーダ質条件は植物の鉄吸収に対し大変不利であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
pH10で生育する特異なソーダ質条件耐性植物の生理を研究することにより、この植物が炭酸イオンに対し特異な適応能力を持っていることがわかってきた。また、この能力は、この植物が生育適応しているソーダ質土壌の性質と密接に結びついていることが明瞭になってきた。ソーダ質土壌の性質は炭酸イオンのみならず、低い鉄濃度、リン酸の可給度などが問題であるが、その条件下でムギネ酸分泌能力がいかに維持されているかについての情報も得られてきた。このことが、なぜ、耐性植物がソーダ質条件下で生育可能であるかについて明確な答えを出しているように思える。 また、当初の計画にあった植物の生育に対するアルミニウムの影響も検討を行った結果、アルミニウムが生育に関与すると思われる有望な結果が得られている。この点について、今後さらに研究を進める必要があり、有益な情報が得られる可能性が高い。
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Strategy for Future Research Activity |
ソーダ質条件においては、どのような要因が最も害作用があるかについては、まだ、解明されきってはいないと思われる。鉄欠乏はその可能性の一つであるが、そのほかにもまだ、考えられる要因がある。たとえば、アルミニウムはその一つである。アルミニウムは、pHが10を超えるとその金属的特徴により、可溶化してくることが考えられる。植物がそのアルミニウムによって害作用を受けている可能性がある。 また、ケイ素も何らかの作用を持っている可能性がある。ケイ素もまた、強アルカリ条件の根圏で可溶化してくることが考えられ、それが植物に対し作用している可能性がある。これらの要因がどのような作用を持っているかを検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
支払金額に端数が出たため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の旅費などに支出する。
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