2014 Fiscal Year Research-status Report
代替カリ資源としてのバイオマス発電燃焼灰および乾燥海藻の肥料化とその活用
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25450083
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
松本 真悟 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (00346371)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 燃焼灰 / 木質バイオマス / カリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,燃焼灰の酸処理品を用いてコマツナおよびホウレンソウのポット栽培試験を行い,木質バイオマス燃焼灰のカリ肥料としての肥効および収穫物の安全性について検討した. コマツナおよびホウレンソウの生育状況は,木質燃焼灰酸処理品を施用した場合の生育障害は認められず,対照肥料である塩化カリと遜色ない生育を示した.収穫時のコマツナおよびホウレンソウの乾物重は処理間に有意差は認められず,燃焼灰由来肥料の肥効は塩化カリと同等であることが明らかとなった.これは,木質バイオマス燃焼灰に含まれるカリのほとんどが水溶性であることから,コマツナおよびホウレンソウによるカリの吸収は塩化カリ同様に容易であり,生育の制限要因にはならないことを示していると考えられた.一方,コマツナのカリ吸収量は木質バイオマス燃焼灰を亜リン酸処理したNo.2で塩化カリよりも有意に高くなった.亜リン酸は土壌への吸着がリン酸よりも小さいため,その肥効が高く,生育が促進されたため,カリの吸収量の増加につながったものと考えられた. 以上の結果から,木質燃焼灰をリン酸,亜リン酸および硫酸で処理して中和と造粒を行った場合,肥料工場における燃焼灰由来肥料の大量生産が可能であり,それぞれの酸処理品のカリの肥効は慣行化学肥料である塩化カリと同等以上であることおよびその安全性に問題がないことが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における木質バイオマス燃焼灰の肥料化および肥効の確認は順調に行われており,その成果は片倉チッカリン(株)により,化学肥料原料としての肥料登録が行われたことで,実用化に向けた取り組みが大いに前進した.
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Strategy for Future Research Activity |
林野庁では年間2,000万m3発生する林地残材等のうち「森林・林業基本計画(平成23年7月策定)」で平成32年における燃料用等のパルプ・チップ用材の利用目標を600万m3(6,000千m3)と見込んでおり,それを木質バイオマス発電した場合の燃焼灰の処分費を計算(林地残材のかさ比重0.4[ton/m3])すると燃焼灰の処分費は総額9.6億円必要となる.本研究で示したように,木質バイオマス燃焼灰を肥料として有効利用できれば処分費は削減できるだけでなく,カリ資源として確保することが可能となり,今後の日本農業にとって大きなメリットとなるであろう.
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