2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞壁のホウ酸架橋率を指標とした作物のホウ素欠乏診断法の開発
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25450087
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
松永 俊朗 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター土壌肥料研究領域, 上席研究員 (20355647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樗木 直也 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (60244266)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ホウ素欠乏診断 / ホウ酸架橋率 / 細胞壁 / ペクチン / ラムノガラクツロナンⅡ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年では、植物の必須微量元素であるホウ素の主な機能は、細胞壁ペクチンのラムノガラクツロナンⅡ(RG-II)部分のホウ酸架橋による細胞壁構造の安定化であることが広く認められている。本研究の目的は、この細胞壁のホウ酸架橋率を指標として用いることによる、迅速・的確な作物のホウ素欠乏診断法の開発である。25年度は、ホウ素欠乏により黒変障害が起きた鹿児島県農家圃場のソラマメ莢を対象試料として用いて、本診断法が農業現場に適用可能であることを示した。26年度は、他の作物への適用性の検討、およびホウ酸架橋RG-IIと非架橋RG-IIのポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)による分離分析の検討を行った。 1.本診断法の各種作物への適用性の検討については、公設農試に生理障害で持ち込まれ、外観症状からホウ素欠乏が疑われた作物を対象試料とした。調製した細胞壁を、ケン化、エンドポリガラクツロナーゼ処理し、可溶化されたホウ酸架橋RG-II(10 k)と非架橋RG-II(5 k)をサイズ排除HPLCにより分離分析した。結果の一例を示すと、スナップエンドウの場合、健全葉の架橋率は0.90と100%近く架橋されていたのに対して、障害葉の架橋率は0.45と50%しか架橋されていなかった。また、障害葉の全ホウ素含量は健全葉に比べて少なく、水溶性ホウ素含量は0に近かった。したがって、この生理障害スナップエンドウはホウ素欠乏であると診断できた。このように、全ての供試作物について、本診断法の有用性を確認することができた。 2.黒変障害ソラマメの子実細胞壁の酵素分解液を、Chormovaら(2014)に従って、PAGE分離、銀染色を行った。PAGEエレクトロフェログラムには、架橋RG-IIと非架橋RG-IIのバンドが検出された。しかし、架橋RG-IIに比べて非架橋RG-IIの発色強度が小さく、バンド濃度から正確な架橋率を求めることは簡単ではないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的として第1に挙げているのは、ホウ酸架橋率を指標とするホウ素欠乏診断法について、農業現場における各種作物のホウ素欠乏診断への実用性を検証することである。今年度は、本診断法が昨年度のソラマメに加えて、スナップエンドウ、ハクサイなど種々の園芸作物のホウ素欠乏診断に適用可能であることを明確に示すことができた。このように、計画に基づいて順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、南九州を中心とする農業現場における様々な作物について、外観症状などからホウ素欠乏が疑われる試料を収集して、ホウ酸架橋率を指標とするホウ素欠乏診断法の適用性の検討を行う。 また、ホウ酸架橋率の分析に際して行う、前処理としての細胞壁調製と、細胞壁の酵素分解物のサイズ排除HPLC/RI測定について、可能な限り操作や薬品管理等を簡単にして、実用の便を図る。 これらの結果をもとにして、細胞壁のホウ酸架橋率を指標とする作物のホウ素欠乏診断法として取りまとめる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額16,067円は、研究費を効率的に使用して発生した残額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、次年度に請求する研究費と合わせて、研究計画遂行のために使用する。
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