2013 Fiscal Year Research-status Report
糸状菌の紫外線センシング:紫外線受容体の解明に向けた多面的アプローチ
Project/Area Number |
25450101
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
木原 淳一 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (40294368)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 紫外線 / 植物病原糸状菌 / 光受容体 / イネごま葉枯病菌 / 遺伝子発現 / 胞子形成 / 光形態形成 |
Research Abstract |
光とは縁がないと考えられている糸状菌類(カビ)においても、胞子形成や色素合成等の光形態形成が、紫外線や青色光によって調節される現象が知られており、菌類特有の青色光受容体に加えて、植物の赤色光受容体(フィトクロム)・青色光受容体(クリプトクロム)や動物のオプシンに類似した光受容体の存在が明らかになっている。一方、イネの病原菌であるイネごま葉枯病菌の分生胞子形成は紫外線によって誘導され、青色光によって阻害される。また、黒色色素メラニンの合成系遺伝子の発現は紫外線によって増加する。本研究では、イネごま葉枯病菌を用いて、紫外線受容体の実体解明のための基礎的研究基盤を確立したい。 ゲノム情報からのアプローチとして、植物の紫外線受容体UVR8と相同性が認められる遺伝子(RCC1)をイネごま葉枯病菌からクローニングした。今後、RCC1遺伝子破壊株を作出し、機能解析を行なう予定である。作用スペクトルからのアプローチとして、紫外線UVB(波長310nm)と紫外線UVA(波長340nm)のLED照射における分生胞子形成を調査した。その結果、紫外線UVB(波長310nm)の方が効果的であり、UVB受容体の存在が示唆された。光受容体からのアプローチとして、フィトクロム様遺伝子破壊株の光応答について解析を行なった。その結果、フィトクロム様遺伝子破壊株では、赤色光照射下において分生胞子形成が見られたことから、赤色光はイネごま葉枯病菌の分生胞子形成に抑制的に働いていることが推察されたが、さらに、今後、詳細に解析を行なっていく予定である。 また、紫外線によって発現が増加する遺伝子の解析を引き続き行ない、46遺伝子の発現解析及び塩基配列の解析を行ない、日本DNAデータバンク(DDBJ)に登録を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
紫外線受容体を欠損した変異株の作出を目指したが、今年度はあまり進まなかった。各種遺伝子破壊株を作出するために、イネごま葉枯病菌を形質転換を行なったが、形質転換効率が低く、改善する必要がある。紫外線LEDを照射した菌体における発現解析が遅れているため、次年度に重点的に実験を行なう。
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Strategy for Future Research Activity |
植物の紫外線受容体UVR8と相同性が認められる遺伝子(RCC1)の遺伝子破壊株を早急に作出し、紫外線受容体との関連について調査する。紫外線UVB(波長310nm)と紫外線UVA(波長340nm)のLED照射における各種遺伝子の発現解析を効率よく進めるため、予備実験を行ない、照射条件を絞りたい。紫外線受容体の欠損株のスクリーニングについて検討を行なう。遺伝子破壊ベクターの構築を推進するため、Seamless Cloningの使用を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果が不十分な部分があり、予定していた学会発表を取りやめた。発現解析や遺伝子破壊株の解析が予定していたよりも進まなかったため、試薬の購入を保留にした。不調のある実験機器を新規に更新するかどうかの判断ができなかったため、次年度に予算を一部繰り越した。 研究成果をとりまとめ、学会発表を行なう予定である。発現解析や遺伝子破壊株の解析に関して、問題点を早期に解決し、実験を推進していく予定である。不調のある実験機器の新規更新も検討する。
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Research Products
(1 results)